経団連くりっぷ No.127 (2000年6月22日)

貿易投資委員会 総合政策部会(部会長 團野廣一氏)/6月2日

日本は欧米諸国に乗り遅れず、自由貿易協定を推進すべき

−神戸大学 細野教授よりきく


総合政策部会では、民間産業界の立場から、わが国が自由貿易協定を推進していく意義や問題点等について具体的な検討を行なっている。この一貫として、神戸大学の細野昭雄教授から、北米自由貿易協定(NAFTA)およびEUメキシコ自由貿易協定の概要、日墨自由貿易協定の可能性などを中心に話をきくとともに懇談した。この中で細野教授は、日本の産業界がメキシコにおいて欧米企業と同等の条件でビジネス活動ができるよう、包括的な内容を含む日墨自由貿易協定を積極的に推進すべきであると述べた。

○ 細野教授説明要旨

  1. 米州における自由貿易協定
  2. 米州地域においては、北のNAFTAと南のメルコスール(南米南部共同市場)を中心に、多くの自由貿易協定が網の目のように存在している。1990年代に入り、米州域内の貿易・投資が急速に伸びたが、自由貿易協定が果たした役割は大きい。
    特にメキシコは、NAFTAの加盟国であるとともに、本年7月1日には欧州共同体との自由貿易協定が発効する。
    さらに、2005年を目指して、米州のすべての国を含む米州自由貿易地域(FTAA)の創設に向けた交渉も進んでいる。

  3. 包括的な自由貿易協定
  4. NAFTAおよびEUメキシコ自由貿易協定は、物品の貿易に加えて、サービス貿易、投資、政府調達、知的財産権、紛争処理等の幅広い内容を含む包括的な協定である。
    NAFTAでは、投資に関して、

    1. 高度な投資保護、
    2. 多くのパフォーマンス要求の禁止、
    3. 第三者機関による紛争処理、
    等が規定されており、域内企業による投資が優遇されている。
    またNAFTAでは、米国企業の強い意向によって、知的所有権の高度な保護も盛り込まれた。
    さらに政府調達ビジネスに関して、NAFTA域内企業はすべての国において同等の条件で参加できる内国民待遇を与えられている。メキシコは、EU企業に対しても同じ待遇を認めており、主要先進国では日本だけがメキシコにおいて差別的な立場に置かれることとなる。
    また、EUメキシコ自由貿易協定は、農産物に関してかなりの品目が自由化の例外とされており、日本が協定を検討していく上で参考になろう。

  5. 日本と自由貿易協定
  6. 日本は、メキシコにおいて、わが国産業界が蒙っている不利益を解消し、欧米諸国の企業と同等の条件で貿易・投資活動ができるよう、メキシコとの間に包括的な内容を含む自由貿易協定を締結すべきである。
    同時に、例えばシンガポール等のように比較的産業構造が近い国と、今後のモデルとなるような自由貿易協定の締結を検討すべきである。


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