経団連くりっぷ No.127 (2000年6月22日)

WTOサービス自由化交渉に関する懇談会(座長 太田 元 参与)/6月6日

WTOサービス貿易自由化交渉の動向

−外務省高瀬サービス貿易室長よりきく


サービス貿易自由化交渉の進め方をめぐりWTOにおける議論が進捗している。外務省の高瀬寧サービス貿易室長に最近の動向をきいた。

  1. 交渉のロードマップを採択
  2. 5月下旬、ジュネーヴにてサービス貿易理事会特別会合が開催され、当面の自由化交渉のスケジュールを示すロードマップが採択された。まず、交渉の第1段階として各国が交渉方法に関する提案を年内に行ない、来年3月に、それまでの進展とその後の進め方を検討する評価会合を開催し、交渉の第2段階を開始することとなった。

  3. 交渉の指針
  4. サービス貿易に関する一般協定(GATS)は、交渉の全体像を示す指針を作成すべき旨規定している。途上国は、交渉の指針作成を市場アクセス交渉開始の条件としているため、先進国側はガイドライン作成を急いでいる。わが国としては包括的ラウンドの早期立ち上げを主張する立場から、交渉の指針が包括的ラウンドを視野に入れたものとなるよう主張している。

  5. 交渉の方式
  6. 環境、エネルギー、電子商取引等の分野については交渉の方式として「クラスター・アプローチ」を採用することが有効との考えが米国を中心にみられる。クラスター・アプローチとは、コアとなるサービス(例えば環境サービスの場合、排ガス改善サービス、上下水サービス、廃物処理等)に加えて、相互に関連するサービス(例えば環境エンジニアリング、建設、運送等)をクラスターとしてグループ化し、併せて自由化交渉の対象とするものである。
    過去の交渉は個別のサービス分野ごとに行なわれてきたため、関連する分野における約束の一貫性が考慮されていないという問題があった。クラスター・アプローチを導入することでこの点を克服できる。もっとも、同アプローチについては、あまり分野を広げ過ぎるとクラスターが重複してしまうこと、輸送サービスなどの既存のコアとなるサービスが環境サービス関連のクラスター(例えば廃棄物の輸送等)に分類、細分化されるなど、弊害も懸念され、慎重な対応が求められる。

  7. 今後の交渉の動向
  8. 交渉の進め方を巡っては、各国間に思惑の違いがある。途上国は現段階で交渉の内容に立ち入ることを避け、当面交渉の指針・方式のみを議題としたいと考えている。米国は、クラスターアプローチ等を提案することで、本格交渉にむけて、各国に縛りをかけたい考えのようだ。他方EUは、年内に自由化のリクエストを出すべく産業界からヒアリングを行なっている。わが国としては、夏までに産業界の関心を洗い出して、最も有効な交渉方法を考案して行く予定である。なお、包括的ラウンドをつねに意識していることはいうまでもない。


くりっぷ No.127 目次日本語のホームページ