経団連くりっぷ No.128 (2000年7月13日)

なびげーたー

企業会計審議会に代わる新しい設定主体の構築

経済本部長 角田 博


経済のグローバル化の進展に伴い、新しい会計基準設定主体の構築が始まった。それをベースに国際会計基準設定への積極的関与が強く求められている。

ロンドンに本拠を置く国際会計基準委員会(IASC)は会計基準の国際的標準化を目指して活動してきたが、コア・スタンダードの完成に伴い、その影響力を一層強化するために、2001年初頭にも公認会計士を中心とした組織から、各国の会計基準設定主体を中心とした新体制に移行する。

これまで事実上の世界標準と見なされてきたSEC基準を作成する米国もIASCの再編・強化を積極的にリードしており、英国、ドイツ等でも国内の会計基準設定主体を抜本的に強化するための組織改革を既に終えている。常勤者のいる事務局を設置して、国際会計基準の設定に積極的に関わり、それとの整合性を図ろうとしている。

一方、わが国では大蔵省に設置された企業会計審議会で会計基準が設定されており、近年の大改革で国際会計基準と同等のレベルの会計基準が設定されたと言われる。しかし、わが国の企業が発表する英文財務諸表の注記にローカルルールである日本の会計基準が用いられたとするレジェンドがつけられたり、新IASC設立のための指名委員にアジアから香港が選ばれ、日本からは選ばれなかった等の問題が生じている。さらに、わが国の会計基準は金融行政、経済政策からの独立性が確保されていないのではないかとの不信感が高まり、わが国の会計基準設定主体、あるいは監査体制はこれでいいのかという危機感が高まっている。

国際標準に沿ったわが国の新しい会計基準の適用は昨年度から始まったばかりで、省庁再編の中で資本市場行政のあり方も大きく変わろうとしている中で、わが国も国際的水準に追いつきつつあるという官民あげてのPR不足は否めず、今後の努力に待たれる面がある。また新IASC設立に関しては指名委員会から三井物産の福間副社長、田近公認会計士が評議員に選任され、積極的関与の途が開かれた。

残るは国内会計基準設定主体の強化、監査基準・監査体制の見直し等である。6月末「企業会計基準設定主体のあり方に関する懇談会」が発表した論点整理では、最終的な設定権限は政府に残すが、設定主体の民間への移行による自発的かつ、独立性、透明性、迅速性、国際性を備えた会計基準の設定を求めている。政府への全面依存からの脱却、事務局の強化のためにはそれに応じて民間の負担も高まらざるを得ない。

企業活動の国際化、国際的M&Aの活発化、国境を超えた資本取引の急速な進展の中で、大企業だけでなく中小、ベンチャー企業においても国際的に調和のとれた企業実体の開示が求められる。そうした環境下で、わが国としても国際会計基準を受動的に受け入れるのではなく、積極的にその策定に関与し、調和を図ることの必要性について正しい理解と覚悟が求められる。


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