経団連意見書 /6月20日
宇宙開発利用推進会議では、昨年のH-II8号機ロケットの打上げ失敗によってわが国の宇宙開発のあり方が問われる中、産業界の立場から、わが国宇宙開発・利用の意義、宇宙政策や体制のあり方、宇宙産業の目標等についてビジョンを提示すべく本年3月より基本問題ワーキング・グループで検討を重ねてきた。当会議として、5月31日の企画部会、6月16日の本会議での審議を経て、意見書「宇宙政策ビジョン/わが国宇宙開発・利用体制の改革と宇宙利用フロンティアの拡大」をとりまとめ、6月20日の理事会の承認を得て、政府・与党等関係方面に建議した。以下はその概要である。
わが国宇宙開発の課題は、
内外の状況は、
提言の基本的考え方
人類全体に対する貢献:
国益の追求:
追求すべき国益とは、
宇宙市場と宇宙産業の将来性:
世界的に情報通信を中心に宇宙利用の裾野が拡大。世界の宇宙産業の市場規模は、1998年は10.5兆円、2010年は約4倍の40.2兆円になる見込み。
わが国宇宙産業の現状:
わが国の宇宙産業の規模は、1996年度は7,922億円、1998年度は1兆1,027億円(世界市場の約11%)に増大。
わが国宇宙産業の国際競争力の評価:
技術的には欧米に比肩しうる水準に接近。しかし、コストおよび納期を含めた国際競争力を有するのは、一部のコンポーネントに限られる。
国際競争力強化へのロードマップ:
欧米同様、宇宙産業の実証機会の拡大、国の宇宙インフラ整備による実利用の増大、技術安全保障等の観点を踏まえた調達等を推進すべき。
社会基盤としての宇宙インフラの整備:
国民の安全、福祉、生活の質的向上を図るため、宇宙インフラを基本的社会基盤と位置づけ、国として整備していくことが重要。
わが国宇宙産業の目標:
国際市場で競争できる水準の早期達成が目標。2010年頃に、宇宙産業全体で6兆円、うち宇宙機器産業で1兆円の産業規模を目指す。
官民が協力し、宇宙開発・利用、産業化の意義、経済・社会全般に及ぼすメリット等を広報し、国民の理解と支持を得るよう努力。
宇宙開発事業団の研究開発の信頼性向上のための改革:
地上試験や宇宙実証の機会を充実すべき。
宇宙開発事業団の改革の方向性:
宇宙開発事業団は、その目的を宇宙の開発・利用を通じた社会への貢献とし、「宇宙の産業化」と「宇宙インフラの整備」を視野に入れた活動を推進するとともに、外部リソースの積極的活用を図る。
宇宙科学研究所のあり方:
技術力の信頼性回復が必要。わが国の科学技術基盤の強化や宇宙の産業化に貢献するような取組みも強化すべき。
国家的宇宙政策の必要性:
欧米は、国として一元的・戦略的な宇宙政策を策定、宇宙産業を支援。わが国としても、一元的・戦略的な宇宙政策と体制の確立が必要。
「次期科学技術基本計画」での宇宙分野の位置付け:
「次期科学技術基本計画」において、宇宙を情報通信、ライフサイエンス、材料、環境に並ぶ重点分野として位置づけるべき。
政府横断的かつ総合的な宇宙政策への転換:
わが国の科学技術政策における宇宙の位置付けや政府横断的な宇宙政策を審議し、決定すべき。その際、「宇宙の産業化」と「宇宙インフラの整備」を明確に位置付けるべき。
「総合科学技術会議」の宇宙分野の取組みの強化:
総合科学技術会議は、科学技術政策における宇宙の位置付けや政府横断的な宇宙政策の基本方針の策定に加え、予算配分の基本方針の策定、プロジェクトの評価を行なうべき。また、例えば、その中に宇宙専門調査会(仮称)を設けるべき。
関係各省庁は、総合科学技術会議の定める宇宙政策に基づき、政策を立案・実施。その際、
政府は、米欧の宇宙関係の政府調達等との比較を行ないつつ、技術安全保障上の必要性から、国産の衛星やロケットが調達されるための方針と仕組みを検討すべき。
国の主導の下で実施機関と産業界が連携し、研究開発、実用化から商業化へ至る一連の流れを作り出し、国の投資が新技術やそれを利用した新産業・新事業へと結実する循環を生み出すべき。
新産業、新事業の創出:
わが国産業は、急速に進展しているIT革命関連分野等の潜在的な需要を掘り起こし、新産業、新事業の創出に積極的に取り組むべき。
競争力強化に向けた企業経営の革新:
企業自らが競争力の強化(付加価値の向上、コスト削減、納期の短縮)と信頼性の向上に向け、
国民のための「IT宇宙インフラ」の整備:
「高度情報化社会の実現による生活の質の向上」「安全・安心な生活の実現」「地球環境保全」等のため、以下の「勝てるIT宇宙インフラ」を構築すべき。
国による研究開発プロジェクトの推進:
国による研究開発においても宇宙産業の競争力強化に資するプロジェクトの推進が必要であり、以下のようなプロジェクトを進めるべき。
ITを活用した宇宙CALS等の構築・拡充:
総合的な競争力を強化するため、「宇宙CALS」の構築を軸に、製造等に係る情報の電子化とデータ共有等を効率的に推進すべき。