経団連くりっぷ No.128 (2000年7月13日)

国土・住宅政策委員会(共同委員長 今村治輔氏)/6月9日

沖縄をアジア・太平洋地域における情報通信ハブ基地に

−沖縄情報通信産業振興に関する説明会を開催


沖縄県では現在、重要施策の一環として情報通信産業の誘致・育成に努めている。基地経済から脱却し自立を目指す沖縄の振興を支援している経団連では、県の取組みに呼応する形で標記説明会を開催した。当日は、約160名の参加のもと、沖縄の国際情報特区構想および情報通信産業の誘致策について、郵政省の稲村 公望 官房審議官ならびに沖縄県企画開発部の与儀 朝栄 部長より説明をきくとともに、活発な意見交換を行なった。

  1. 沖縄国際情報特区構想の推進
    −稲村 郵政省官房審議官説明要旨
    1. 「沖縄国際情報特区構想」とは
    2. 沖縄国際情報特区構想は、政府の沖縄振興に関する諸施策が講じられる中で、1999年6月、「沖縄経済振興21世紀プラン」中間報告において提案された。同構想は、沖縄をアジア・太平洋地域の情報通信ハブ基地として位置づけ、海外の情報通信関連企業等の誘致によって沖縄経済を活性化することをねらいとしている。
      具体的には、沖縄振興開発特別措置法の改正に伴い、指定された23地域に対して投資税額の控除や事業税、不動産取得税の課税免除等の税制上の優遇措置を講ずる情報通信産業振興地域制度が創設された。

    3. 沖縄デジタルスーパーコリドー
    4. 優遇措置によって沖縄各地に整備されつつある諸施設を結合し、沖縄を「世界のデジタルコンテンツ工場」とするため、わが国最高速の2.5ギガビットの研究開発用通信回線によって沖縄全県を巡る「デジタルスーパーコリドー」を構築し、東京オフィスとの連携を図ろうと考えている。
      施設の一例としては、特殊撮影のためのデジタルエフェクトスタジオを備えた沖縄情報通信研究開発支援センター(北谷町)が挙げられる。世界に7台しかないモーション制御カメラ装置は高度な特殊撮影が可能なため、ハリウッドからも使用希望が相次いでいる。さらに、亜熱帯の気候や美しい自然を利用したコンテンツ産業の育成について沖縄は有望との指摘もあり、沖縄コンテンツ産業に対する期待が高まっている。

    5. 構想実現に向けた方策
    6. 構想を実現するため、

      1. アジア・太平洋地域の情報通信拠点の形成に向けたグローバルなインターネット網の形成、
      2. 地域情報通信ネットワークの高度化、
      3. 国内外の情報通信関連企業、研究機関等の誘致促進・集積・育成、
      4. 国内外のコンテンツ、アプリケーションの集積、
      5. 情報通信産業等に明るい人材の早期・大量育成、
      の5つの方策を実施していくことが重要である。
      公共事業に比して情報関連の予算は圧倒的に少ないが、公共インフラとしてのストックの性質に鑑み、予算・税制面での最大限の配慮が求められる。また、さまざまな優遇措置に加えて、民間企業の自立的な投資活動が促進される環境の整備が重要である。

  2. 沖縄県における情報通信産業の誘致策
    −与儀 沖縄県企画開発部長説明要旨
    1. 沖縄県マルチメディアアイランド構想
    2. 県では情報通信関連産業の振興を観光産業、加工交易型産業とともに将来の沖縄の中核産業と位置づけ、1998年9月に「沖縄県マルチメディアアイランド構想」を策定し、情報通信産業の振興に取り組んできた。同構想は、

      1. 沖縄における情報通信産業の振興・集積による自立的な経済発展、
      2. 高度情報通信技術を活用した特色ある地域振興の道標、
      3. アジア・太平洋地域における情報通信分野のハブ機能を通した国際貢献、
      の3点を目標に掲げている。
      具体的には、情報通信産業によって1997年の0.6万人から2010年には4倍の2.45万人までの雇用拡大を目標としており、沖縄の優位性を全面に押し出す戦略的な取組みが不可欠である。

    3. 情報通信産業の重点分野
    4. 沖縄の特性を活かし

      1. コールセンターを主体とした情報サービス、
      2. CG映像や映画、ゲーム等のコンテンツ制作、
      3. 地理情報分野等特定の分野の集積を目指したソフトウェア開発、
      に取り組むことが重要である。
      現状では、NTT番号案内を皮切りにIBM等のサポートセンターが沖縄に進出し、産業としての集積が始まりつつある。また、コンテンツ制作では3次元CGを制作するベンチャー企業等の設立が進みつつあり、今後これらを活用し、コンテンツ制作企業等が特撮映画、アニメ等のコンテンツを生み出し、国内外に発信していくことが期待される。こうした取組みが奏効した結果、1996年度以降20社以上の企業が沖縄に進出し、約1,770人の新規雇用が発生している。

    5. 各種支援策
    6. 情報通信産業振興の直接的な支援策として、公募により30歳未満の若年層の雇用を行なう企業に対して賃金の1/2、15万円を限度として3年間賃金を助成する「沖縄若年者雇用開発助成金」が創設された。また、沖縄〜本土間の専用線費用が高額であることから、沖縄に立地する企業に対し、専用線を定価の約80%の割引価格で提供する「通信コスト低減化支援事業」等を行なっている。さらに、人材育成を図る施設としてマルチメディアセンターが那覇市内に設置されている。
      こうした国の沖縄振興策、県の構想や市町村の取組みにより、情報通信産業の集積が始まっているが、今後、この流れを確かなものにするためにも、一社でも多く沖縄への進出を検討して頂きたい。

  3. 意見交換(要旨)
  4. 経団連側:
    通信コスト低減化の施策が取られているものの、本土に比して依然高い専用線がネックとなっている。
    稲村審議官:
    過度な補助金依存はかえって危険であり、施策内容を充実させることによって競争力を高めたいと考えている。

    経団連側:
    現在の沖縄振興開発特別措置法は2001年度までの時限立法であり、事業の継続性の観点からは、各種優遇措置等を継続的に行なってほしい。
    与儀部長:
    次の法律は特別措置法の延長ではなく沖縄振興法(仮称)が制定されることとなっており、情報特区構想についても中核的な位置を占めるものと考えている。

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