小野事務次官ほか建設省幹部との懇談会(司会 香西昭夫副会長)/6月27日
来年度予算の概算要求ならびに来年度税制改正に向け、小野邦久事務次官ほか建設省幹部を招き、道路整備のあり方や都市政策、住宅政策を中心テーマに意見交換を行なった。冒頭、香西副会長から、本テーマに係る経団連の関心事項を説明した後、建設省から政府の取組みについて説明をきくとともに懇談した。
道路は、わが国の脆弱な国土条件を克服し、国土を有効に利用し、適正に管理するための最強のツールである。道路は、人と物の自由な移動や生活圏の拡大を支える機能に加え、市街地の骨格形成や避難路等の防災空間、路面電車・地下鉄等の運行空間としての機能、さらには情報通信や電気、ガス等を供給する機能も有する。高度医療サービスやコンビニ、宅配といった新しい生活スタイルも、道路が支えている。
欧米諸国では、わが国よりも整備水準が高いにもかかわらず、現在でも高速道路の整備を着実に進めている。戦後、わが国の自動車交通量は急速に増加し、今や自動車が総移動量の5〜6割を分担するに至った。わが国の道路ネットワークの整備は未だ不十分であり、さらに整備する必要がある。
道路整備の遅れは、渋滞問題を深刻化させ、沿道環境の悪化等の問題を生じさせる。交通円滑化による平均速度の向上により、窒素酸化物、粒子状物質、二酸化炭素の排出を同時に削減できる。都市部では、特に環状道路の整備を急ぐ必要がある。
地方における道路整備は、生活圏相互の連携・機能補完によってコミュニティを再生するという機能を持つ。国民共有財産としての魅力ある地方を維持するため、幹線道路やトンネル・橋梁の整備が必要である。
着実な道路整備のためには、道路特定財源を維持する必要がある。米国でも、道路整備の財源に充当される連邦燃料税が課せられており、その税率は近年引き上げられ、道路整備財源が増強されている。
都市計画法は、高度成長による都市への人口集中や市街地のスプロール化等に対応し、昭和43年に制定された。その後30年経ち、少子高齢化や都市への人口集中の沈静化など、経済社会環境に大きな変化が生じたことから、これらに対応するため、5月19日に都市計画法を改正した。
主な改正点としては、中心市街地における土地の有効利用と活力ある都市の核づくりの観点から、
都市の再生は、わが国経済を新生するためにも喫緊の課題であるとの認識の下に、小渕前総理の指示を受け、東京圏および京阪神地域についてそれぞれ「都市再生推進懇談会」を開催し、都市再生のための具体的な提言について検討を行なっている。7月中にも検討結果をまとめ、来年度の概算要求に反映させたい。
1999年に導入された住宅ローン控除制度の適用は2001年6月入居者までであり、住宅取得資金に係る贈与税特例の適用期限は本年12月末である。また、居住用財産の買換特例、居住用財産の譲渡損失に係る繰越控除制度も本年12月末で適用期限を迎える。そのほか、流通税である登録免許税や不動産取得税の特例措置の適用期限が2001年3月末で切れる。
このように、住宅に係る特例措置が相次いで適用期限を迎えることから、年末の税制改正に向けて、相当気合を入れて対応する必要がある。税制措置は経済対策、景気対策としての側面が強い。経済に対する当面の危機感を主張するほか、住宅税制の本質論から検討していく必要もある。
住宅・宅地審議会が6月21日に「21世紀の豊かな生活を支える住宅・宅地政策について」と題する答申をまとめた。本提言は、「市場重視」と「ストック重視」の住宅政策体系への転換を求めており、具体的には「少子・高齢社会への対応」、「都市居住空間の再生」、「循環型社会への対応」という3つのキーワードを掲げ、バリアフリー化住宅の普及などの重点施策について提言している。
野党を中心に「無駄な公共事業を見直すべき」との意見が強いが、豊かな国民生活の実現と産業基盤の構築の観点から、公共事業は重要であり、引き続き行なう必要がある。
公共事業の遂行にあたって、用地の確保が大きな課題である。公共事業の効率的な実施の観点からも、土地収用制度を見直す必要がある。本問題について建設経済局長の私的研究会を設けて検討していく。