経団連くりっぷ No.128 (2000年7月13日)

WTOエネルギー分野自由化交渉に関する懇談会(司会 太田 元参与)/6月12日

活発化するエネルギーサービス自由化の議論


WTOサービス貿易自由化交渉の一環として、エネルギーサービスの自由化に関する議論が活発化している。現状について通産省サービス産業課の竹上 敦之 国際室長、資源エネルギー庁国際資源課の岸 博幸 総括班長に説明をきいた。

  1. エネルギーサービス自由化の現状
  2. WTOでは、エネルギーサービス自由化に関する議論が活発化している。例えば、米国は、さる5月、サービス貿易理事会の特定約束委員会において同分野の自由化に関する提案を行なった。
    エネルギーサービスについては、現行のWTOサービス貿易一般協定(GATS)の約束表に独立したサービス分野として明示されておらず、建設、輸送サービス等の分野に関連サービスが点在しているに過ぎない。サービス貿易の自由化は、約束表に基づいて推進されるので、まずエネルギーサービスをいかに分類するかについてコンセンサスを得る必要がある。

  3. エネルギーサービス自由化の論点
  4. WTOの場でエネルギーサービスの自由化について議論する場合、以下の点に考慮する必要がある。

    1. エネルギー源の分類
      エネルギーの場合、電力と石油とでは競争の度合いが違うなど、一括して自由化を議論することはできない。エネルギー源別の分類の可能性について検討していく必要がある。

    2. 産業の実態の考慮
      自由化は産業の実態を反映した形で推進されなくてはならない。わが国の場合、エネルギー生産から小売までを一企業が受け持っている。もしも、生産施設のオペレーション、エネルギーネットワーク事業、小売事業といった形で別々に自由化が議論された場合、実態以上に産業が細分化される恐れがある。

    3. エネルギーサービスの範囲
      エネルギーサービスの範囲は不明確である。特に、エネルギーの生産をサービスに分類するべきか、さらに検討が必要である。

    4. クラスター・アプローチ採用の是非
      エネルギーサービスのみならず、コンサルティング、金融などの関連サービス・セクターも併せて自由化の対象とする「クラスター・アプローチ」を採用するべきか否かも検討課題である。

  5. 四極(日米欧カナダ)の立場
  6. エネルギーサービス自由化について、四極の立場に違いがある。米国は産業界からの圧力もあり、自由化に積極的である。フランスは電力、ガスの自由化に消極的である半面、石油については積極的である。イギリスは、一連の規制緩和を経て自由化に積極的な姿勢を見せている。日本では、エネルギー関連業界は「守り」の姿勢のようであるが、国内における規制緩和が進む中、今後の海外進出をも念頭に「攻め」の姿勢も必要であろう。通産省・資源エネルギー庁としても業界の意見を踏まえて対応したい。


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