経団連意見書/7月18日
貿易投資委員会(委員長:槙原稔氏)において、WTOと並ぶ通商政策の新たな柱として、わが国が自由貿易協定に積極的に取り組むよう求めるべく、標記提言をとりまとめ、7月18日の理事会の承認を得て、政府・与党等関係方面に建議した。以下はその概要である。
1990年代に入り、北米自由貿易協定(NAFTA)、ASEAN自由貿易地域(AFTA)、南米南部共同市場(メルコスール)の形成、EUの拡大など、自由貿易協定が世界的に急速な広がりを見せており、その数は120にのぼる。
米国は、2005年を目標に、南北米大陸に跨る米州自由貿易圏(FTAA)の設立を目指している。他方、本年3月にメキシコとの間で自由貿易協定を締結したEUは、更にメルコスールとの締結交渉を進めている。このように、諸外国において自由貿易協定は、WTOと並ぶ重要な通商政策の一つと位置づけられており、国際的な通商システムは、多国間主義と地域主義が共存する時代となっている。
しかし、わが国はこれまで自由貿易協定に取り組んでこなかったため、企業が国際的な事業活動を行なう上で、事業機会を逸したり、既に他国と自由貿易協定を締結している国とのビジネスにおいて、競争上きわめて不利な立場に置かれるといった事態が生じている。
わが国は、通商政策の新たな柱として、自由貿易協定を積極的に活用していく必要がある。
自由貿易協定では、域内の物品の貿易に係る関税及び非関税障壁の撤廃にとどまらず、サービス貿易、投資、政府調達、税関協力等、WTOで取り上げてこなかった分野をも含め、高度な自由化やルール作りを行なうことができる。
わが国が自由貿易協定に取り組むべき主な理由は、以下の四点である。
わが国が自由貿易協定を積極的に推進していく上で、以下の点に留意する必要がある。
重要なWTO体制の維持・強化
引き続きWTOによる多角的な通商体制に強くコミットし、包括的な新ラウンド立ち上げに向け最大限の努力をはらう必要がある。また、わが国が自由貿易協定を締結する際には、WTO協定との整合性を十分に確保すべきである。
国内産業に対する配慮
国内産業は、自助努力を基本として競争力の強化に努めるべきである。そのためには、わが国の高コスト構造を是正する必要がある。他方で、急激な自由化等により深刻な影響を蒙る場合には、
自由貿易協定は、企業の貿易・投資活動の円滑な推進に資すべく、広範な分野を含む包括的な協定であることが望ましい。具体的には、
自由貿易協定は、一部の産業にとって痛みを伴うことがあっても、国全体としての利益を念頭におきながら、検討を行なっていく必要がある。その実現に向け、強い政治的なリーダーシップが求められる。