経団連くりっぷ No.129 (2000年7月27日)

資源・エネルギー対策委員会(委員長 秋元勇巳氏)/6月13日

情勢変化に対応しわが国のエネルギー政策を見直す

−河野資源エネルギー庁長官との懇談会


資源・エネルギー対策委員会では河野博文 資源エネルギー庁長官を招き、わが国のエネルギーを取り巻く情勢変化と今後のエネルギー政策の見直しにおける重要課題について説明をきいた。また、当委員会の今後の活動として、エネルギー政策を巡る課題について産業界の考え方を整理すべく、個別のテーマごとに有識者よりヒアリングを行なっていくことが了承された。

○ 河野資源エネルギー庁長官説明要旨

  1. わが国のエネルギーを巡る現状
  2. COP3の合意を受けて現行の長期エネルギー需給見通しを策定(1998年6月)して以降、エネルギー需給の両面で以下の状況変化が生じてきた。

    1. 需要面について
      近年の景気の低迷に伴い、1998年度のエネルギー消費は第2次石油ショック以来、16年ぶりにマイナスに転じた。このことは、COP3にて合意されたわが国の数値目標に向けての発射台を下げる効果を持ち、その意味ではエネルギー政策にとっての自由度を広げたともいえる。
      しかし一方で、景気低迷により最近の産業部門の設備投資はかなり停滞しており、今後の省エネ進展の遅れが懸念される。
      また、オイルショック以降、産業部門のエネルギー消費はほぼ横ばい状態であるのに対し、民生・運輸部門の需要は約2倍と大きく伸長しており、右肩上がりの傾向が続いている。

    2. 供給面について
      昨年のウラン加工施設臨界事故等、原子力に対する国民の信頼を損なう累次の問題に対し、安全・防災への対策等を講じてきたところであるが、原子力立地の長期化の懸念が指摘されていることは事実である。3月末に公表された電力供給計画でも、2010年度までの原発立地計画は従来の20基から13基に減少しており、これを前提としたエネルギーの需給バランスについても検討する必要がある。
      環境問題への関心の強まりを背景に、新エネルギー導入に対する期待が高揚し、導入が進展している。しかし同時に、新エネルギーが将来、どの程度の実力を持ち得るのかについて、再度評価する必要がある。
      わが国の原油輸入中東依存度の上昇(1998年度86%)、アジアの石油需要の増大、近時の石油価格の上昇、サウジにおけるアラビア石油の権益喪失等により、石油安定供給確保に対する関心が高まっており、天然ガスを含めた国際エネルギー関係への対応も見直しが求められている。

  3. 今後の検討の方向
  4. 環境保全、効率化の要請に対応しつつ、安定供給を実現していくというエネルギー政策の基本目標の実現のため、エネルギー政策の今後のあり方全般について、総合エネルギー調査会総合部会を中心に今後1年程度をかけて幅広く検討を行なう予定である。


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