経団連くりっぷ No.129 (2000年7月27日)

2000年度日本イラン経済委員会総会(委員長 増田信行氏)/7月7日

内外情勢の変化により発展が期待されるイラン


新しく増田三菱重工会長を委員長に迎えた日本イラン経済委員会は、7月7日に2000年度定時総会を開催した。総会では1999年度事業報告および収支決算ならびに2000年度事業計画および収支予算を審議し、原案通り承認した。当日は審議に先立ち、通産省貿易局の加藤文彦貿易保険課長より、最近のイランの経済情勢と対イラン貿易保険の検討状況について説明をきいた。


増田委員長

○ 加藤課長発言要旨

  1. イランの経済情勢
  2. イラン経済において、原油取引は輸出の80%、財政収入の50%を占めており、重要な役割を担っている。ちなみに油価が1ドル変動するとイランの外貨収入が8億ドル影響を受ける。現在の油価の高値安定傾向は、間違いなくイラン経済にとってプラス要因である。昨年度は50億ドルの貿易黒字を達成し、外貨準備高も昨年度末時点で78億ドルと、かなり安定した財政状況になっている。対外債務もここ2〜3年で300億ドル強から103億ドルに減っており、仮に油価がバレルあたり18〜19ドルになっても、今後の債務返済能力は問題ないと見ている。世界銀行が6年ぶりに融資を再開したこともプラス要因である。

  3. 先進各国の動き
  4. 米国の対イラン経済制裁の下で、これまで欧州諸国の保険機関は慎重であったが、昨今、イタリアの貿易保険機関が最も積極的に保険を引き受けている。ヨーロッパの都市銀行も動き始めており、ドイツ銀行が中心となってシンジゲートを組み、イラン石油公社と5億ドル強のグローバル・バンクローンを締結した。このローンは石油を担保とした新しい保証形態で注目に値する。

  5. 対イラン貿易保険の検討状況
  6. わが国も、昨年度末から3件の貿易保険について引き受けを内諾しており、今後もケースバイケースで引き受けていきたい。相談案件もかなりある。引き受けにあたっては、一件当たりの金額が余りにも大きいと難しく、したがってどんな案件でも受けるという訳ではない。ヨーロッパの銀行の例にならい、日本でもイランの中央銀行や政府保証なしで、石油を担保する融資への付保も考えていきたい。

  7. 独立行政法人「日本貿易保険」設立に向けて
  8. 貿易保険は50年間、通産省の中で事業を行なってきたが、経団連の要望もあり来年4月から新しく独立行政法人に生まれ変わる。職員の専門性を高め、実質的なサービス向上が図れるように、7項目の制度・業務改善を行なう。独立行政法人化によって、実務面でも今まで以上に簡素化、迅速化を図り、また案件を積極的に引き受けていきたい。


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