WTOサービス自由化交渉に関する懇談会(座長 太田 元 参与)/6月29日
WTOにおける電子商取引に関する議論を活性化すべく、通産省がとりまとめた提案の概要について通産省通商協定管理課の渡辺哲也 総括班長、情報経済室の野原 諭 課長補佐より説明をきいた。
電子商取引を推進する上では、まずコンピュータ、通信、広告、決済サービス、エキスプレス・デリバリー等の基本的なインフラの自由化が必要である。その上で、電子商取引を通じて取引されるコンテンツの自由化を検討することになる。
電子商取引によって、従来は拠点の設置や自然人の移動を通じてのみ供給が可能であったサービスの越境取引が可能となるため、新たに自由化約束の対象となる事項も少なくない。
過度な国内規制が電子商取引の発展を阻害しないようにすべきである。そこで通産省の提案は、透明性、無差別性、過度に貿易制限的でない措置、国際基準の適用、規制の相互承認について言及している。なお、規制については、もっぱら民間の自主規制に委ねるべきであるという米国と、規制の枠組づくりに政府が関与すべきであるとする欧州との立場に違いがあり、今後調整が必要である。
電子商取引の自由化は必要であるが、一方で競争に勝ったものが独占的地位を占める「弱肉強食」を防止しなければならない。
基本的インフラへのアクセス確保
まず、通信インフラなど競争促進に不可欠なハードウエアのみならず、技術、知的財産権などへのアクセスを保証することが競争を維持する上で重要である。
特許制度の見直し
過度に知的財産権を保護することで競争が阻害されることないよう、ビジネスモデル特許の審査プロセスを厳重にする必要がある。また、特許成立後、当該ビジネスモデルが市場におけるドミナント・モデルとなっても、特許保有者がライセンシングを拒否することで独占を続ければ競争上問題であり、対策が必要である。
排他的慣行への対処
サイバースペースにおける排他的慣行、独占的行為に対して、どこの国の競争法を適用するのかについても検討が必要である。
WTOは経済問題に関して法執行機能を有する唯一の国際機関であることから、電子商取引の推進についてもWTOで取り扱うことが重要である。他方、WTOは事務局、各国の代表を含め、通商の専門家であり、競争や知的財産権に関する知識は不足している。そこで世界知的所有権機関(WIPO)等の国際機関、各国の競争当局等との協力が不可欠である。