経団連くりっぷ No.130 (2000年8月10日)

なびげーたー

特殊法人等の情報公開制度をめぐる課題

常務理事 立花 宏


特殊法人等にも情報公開制度が導入されることとなった。国民に対する政府の説明責務を全うする観点からは一歩前進ではあるが、依然課題も少なくない。

情報公開制度は民主的な行政を実現するための基盤となる制度である。中央省庁等の国の行政機関については、行政機関情報公開法(行政機関の保有する情報の公開に関する法律)がすでに制定されており、2001年4月から施行されることになっている。同法案が国会で審議された際の焦点の一つが、特殊法人等の取扱いであった。わが国の行政運営は、行政機関だけでなく特殊法人等の行政代行的な機関によって担われている。特に、特殊法人等については、これまでその実態が不透明であると度々批判がなされており、国民に対する政府の説明責任を果たすためには、これらの機関も情報公開の対象とすべきである、との考えが強く指摘された。

その結果、同法では、「政府は、特殊法人について、その性格及び業務内容に応じた情報公開に関する法制上の措置を法公布の日(1999年5月14日)から2年を目途として講ずる」ものとされた。これを受け、政府の行政改革推進本部の下に設置された「特殊法人情報公開検討委員会」が、先般、特殊法人、独立行政法人、認可法人に関する情報公開法に盛り込むべき内容等について、報告書を取りまとめ森総理に提出した。

報告書で重要な点の一つは、国民からの請求に基づき情報を開示する開示請求権制度に加え、特殊法人等が自ら積極的に情報をディスクローズする情報提供制度を、2本柱の一つとして位置付けていることである。すでに法律で作成・公開が義務付けられている財務諸表等の情報に加え、報告書で指摘された、特殊法人等の組織、業務、財務、評価および監査に関する基礎的な情報の提供が新たに義務付けられることとなれば、透明性向上の点から大きな前進であるといえる。

問題は、実際にどのような情報がどのように提供されるようになるかである。例えば、特殊法人等には、財務内容を含めた実態が必ずしも明らかにされていない多数の子会社等の関係法人が存在し、それら関係会社に絡んだ割高な発注・調達によるコスト高や天下り等の問題が指摘されている。

今回の報告書では、子会社等の財務諸表等が提供すべき情報として明確に規定されておらず、また、連結財務諸表の公表は努力規定に止まっている。評価・監査に関しても、特殊法人、認可法人については、独立行政法人のような第三者による評価・監査の仕組みが制度化されているわけではない。

政府では、今後、報告書に沿って特殊法人等の情報公開法案の立案作業を進め、次期通常国会に法案を提出することとしている。経団連としては、本年3月の特殊法人改革に関する第一次提言を踏まえ、与党の特殊法人等の改革への取組みをフォローするとともに、政府における今後の立案作業を注視していきたい。


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