経団連くりっぷ No.130 (2000年8月10日)

プロディ欧州委員会委員長講演会(司会 森川敏雄ヨーロッパ地域委員会共同委員長)/7月19日

日・EUのパートナーシップを強化


日・EU定期首脳協議(於東京)および主要国首脳会議(沖縄サミット)に出席のため欧州委員会のプロディ委員長が来日した。経団連では、同委員長を招き、森川ヨーロッパ地域委員会共同委員長の司会の下に講演会を開催した。プロディ委員長から、21世紀に向けた日・EU協力関係ならびに統一通貨ユーロの動向、EUの拡大と深化の行方、グローバリゼーション下のアジア、特に日本との関係強化への期待等について説明があった。

○ プロディ委員長講演要旨

  1. EUの東方拡大の動き
  2. 欧州連合(EU)は単なる自由貿易地域とか政府間機構といったものではなく、まったく新しい独特の性格を有する主権国家間の連合体である。EUの「深化と拡大」にとって、中東欧諸国の加盟は最も重要な課題である。現在EUは15ヵ国の加盟国から構成されており、今後28ヵ国に加盟国数を増やしていく意向である。その市場規模は北米、豪州、日本の3大市場を合わせたものより大きなものになり、今からその潜在性に期待がもたれている。
    欧州委員会は中東欧経済の潜在的成長力、安定性、繁栄を確信しており、同地域との関係強化、加盟支援策を講じている。中東欧諸国は、EU加盟の前に民主主義制度の基盤、法の支配、人権・少数民族の保護を確立しなくてはならない。慎重な加盟交渉プロセスを通じて、欧州に安定し繁栄する民主主義社会を建設したいと考えている。
    また、EUの拡大に備えて既存加盟国は、欧州委員会、理事会ならびに欧州議会等の機構改革に着手しなくてはならない。

  3. ユーロ導入と国際経済の安定
  4. EUは拡大と平行し、経済面では統一通貨のユーロの導入を梃子にEU域内経済の安定を目指している。1999年1月に加盟11ヵ国で始まったユーロ圏は50年以上に渡る米ドル一極体制を根本的に変革するものであると確信している。ユーロ圏の登場は、EU経済だけではなく、国際経済にも多くの恩恵をもたらす。ユーロ圏は世界のGDPおよび総貿易量の20%を構成する等、米国市場に匹敵するだけの市場を提供する。また、ユーロは国際経済安定化へのアンカーの役割を果すことになる。

  5. 日・EU関係強化への期待
  6. 日・EUは経済分野だけではなく政治分野、国際関係の分野でも共通の利益を有する。たとえば、WTOの新ラウンド交渉早期立ち上げ問題、朝鮮半島問題等がある。今後、世界の安全保障の問題についても日・EUパートナーシップの下、更なる協力に向けて二国間協議を行なっていくことが期待される。


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