経団連くりっぷ No.130 (2000年8月10日)

日本メキシコ経済委員会2000年度総会(委員長 川本信彦氏)/7月21日

メキシコは「普通の国」になった

−日本貿易振興会 河嶋主幹よりきく


日本メキシコ経済委員会では、2000年度の定時総会を開催し、1999年度事業報告・収支決算、2000年度事業計画・収支予算、役員改選を審議し、原案通り承認した。当日は、審議に先立ち、日本貿易振興会の河嶋正之企画部事業推進主幹より、メキシコの変貌と日本企業の対応について説明をきいた。河嶋主幹は、7月2日の大統領選挙の結果に示されるようにメキシコは大きな変貌を遂げて「普通の国」になったと述べ、日本企業はこの変化に対し慎重に対応を検討していく必要があると警鐘を鳴らした。

○ 河島主幹説明要旨

  1. 意外だった選挙結果
  2. 7月2日に行なわれたメキシコ大統領選挙では、予想に反して野党国民行動党(PAN)のフォックス候補が当選した。71年ぶりの与野党逆転は、メキシコ人にとっても驚くべきことであった。それだけ変化が急速かつ大きかったといえる。
    こうしてメキシコは、公正かつ透明な民主的選挙による政権交替を成し遂げ中南米の民主化を証明するとともに、変革を選択する国民の意思を表明した。これを引き起こしたのは、選挙制度改革等により政治の民主化をじっくりと進めてきたセディージョ大統領自身であった。

  3. 「普通の国」メキシコ
  4. 1982年から歴代政権が経済の自由化、政治の民主化を進めてきた結果、メキシコのブラックボックス的な部分が政治面でもほとんど消え、アメリカン・スタンダードで見ても政情が理解されるメキシコが誕生した。フォックス政権は8月に新政権の閣僚を指名し、現政権と共同で来年度の予算・政策を策定したいとしており、政策の継続性はおそらく保証されると思われる。
    これまで政権交替のたびに経済危機が繰り返されてきたが、財政規律の遵守、安定成長政策、経済構造改革、北米自由貿易協定(NAFTA)他による外側からの規律の成果により、今回はファンダメンタルズも堅調に推移している。
    メキシコが「普通の国」になったことは、企業家と話していても分かる。彼らは自ら汗をかかなければもうからないことを理解し、独立して起業する者も多い。

  5. NAFTAの中でいかに生き残るか
  6. このようにさまざまな面で「普通の国」になりつつあるメキシコとのビジネスについて、日本企業も慎重に見直す必要がある。
    2000年11月からマキラドーラ制度が変更され、保税の恩典が消滅する。つまり、NAFTAが本当の意味でのNAFTAになる。さらに欧州連合(EU)との自由貿易協定も発効し、北米企業のみならずEU企業の進出ラッシュが予想される。
    日本企業は、真に「自由」なNAFTAが誕生したことを認識し、NAFTAの中で生き残ることを慎重かつ真剣に考える必要がある。


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