経済政策委員会 企画部会(部会長 小井戸雅彦氏)/7月31日
経済政策委員会企画部会では、一橋大学の高山憲之教授を招き、今後四半世紀における社会保障制度のあり方について説明をきいた。
今後四半世紀の社会保障制度を考えるうえでは、労働人口の減少が避けられないことや、マクロベースでの賃金上昇が期待しにくいことから、社会保険料引き上げは困難であることを認識すべきである。
基礎年金を税方式化し、厚生年金保険料の守備範囲を縮小すれば、保険料引き上げを行なわずに厚生年金制度を維持できる。試算によれば、足元で厚生年金保険料率を4%引き下げること(17.35%→13.35%)が可能であり、2060年時点でも、保険料率を18%に抑えつつ、積立金を維持できる。また、現行の年金給付水準は、なお引き下げの余地を残していることから、更なる保険料率引き下げも十分可能と考えられる。
財源調達方法と経済成長の関係について、オーバーラッピング・ジェネレーションズ・モデル(世代重複モデル)を用いて試算したところ、
基礎年金の税方式化は、年金受給者にとっての公的負担増につながる。しかし、年齢階層別の平均所得(再分配後、一人あたり)をみると、現状では、高齢者の所得水準が若年層を上回っており、現役世代から高齢者への所得再分配が行き過ぎであることは否めない。この点を高齢者にも理解してもらう必要がある。幸い、現在の高齢者は「高貴な直感」を持った世代であり、子供や孫の負担を軽減するためであれば、ある程度の譲歩を受け入れるのではないか。
厚生年金の報酬比例部分(2階部分)について、「積立方式への移行、民営化」の提案があるが、
年金に関するデータは公共財だが、現実には、厚生省の判断で公開されない場合もある。米国のように年金数理部局を行政から独立させ、要求するデータが速やかに開示される仕組みをつくるべきである。
現状では医療・介護給付と年金給付の二重どり現象がみられ、社会保障給付の総合調整を行なうべきである。また、公共事業や農業対策など、実質的に社会保障に近い性格を持った諸施策との調整も必要となる。