経団連くりっぷ No.130 (2000年8月10日)

2000年度防衛生産委員会総会(委員長 増田信行氏)/7月12日

わが国防衛の重要政策課題

−防衛庁 佐藤事務次官よりきく


防衛生産委員会では、2000年度の定時総会を開催し、1999年度事業報告・決算、役員改選、2000年度事業計画・予算について審議し、原案通り承認した。当日は、審議に先立ち、防衛庁の佐藤謙事務次官を招き、わが国防衛の重要政策課題について説明をきいた。

○ 佐藤事務次官説明要旨

  1. 有事法制について
  2. 国防は国の基本であり、普段からの備えが重要である。平成9年に新たな日米防衛協力のための指針が日米間で策定され、昨年、その実効性確保に必要な法整備として、周辺自体安全確保法等が成立・承認された。今後の課題として、船舶検査活動について新たな立法措置が講じられることを強く期待している。
    一方、日本が武力攻撃を受けた時の対応については、法制面に不備があり、自衛隊が円滑に行動するための法整備が必要である。例えば、有事の際、道路が損傷していても、道路法上、道路管理者でない自衛隊はその修理・補修ができないといった問題がある。
    4月の森総理の所信表明演説でも、有事法制の必要性が指摘されたが、今後、立法化に向けた検討作業を開始するためには、まず、総理指示が必要であると考えている。

  3. 次期中期防衛力整備計画
  4. 現在、防衛庁では政府計画である次期中期防衛力整備計画(平成13〜17年度)に資する検討を進めている。その重点事項は、第1に、近年、多様な事態において有効に対処し得る防衛力の整備を図る観点から、ゲリラ・コマンドウ攻撃、NBC(核・生物・化学兵器)等種々の脅威への対応があり、これらに対する効果的な対応、装備等を研究する必要がある。
    第2に、IT革命に代表される技術革新に対応した防衛力整備が必要である。今般、新たにIT担当の参事官を任命するとともに、IT参事官室を設置し、全庁をあげてITに関する施策を推進する。
    その際、自衛隊の指揮通信機能の高度化、サイバーテロ等に対する情報セキュリティの強化、および技術研究本部の再編など技術開発の見直しが必要である。また、IT革命がもたらすRMA(軍事における革命)への対応についても、防衛局研究室で研究を進めている。

  5. NMD(国家ミサイル防衛)について
  6. 先日、米国のNMD実験が失敗し、日米で共同研究を進めているBMD(戦域ミサイル防衛)への影響が懸念されている。
    しかし、NMDは大陸間弾道ミサイル、BMDは戦域レベルのミサイルが迎撃対象であり、技術要求水準が異なる。また、ABM(弾道弾迎撃ミサイル)制限条約は弾道ミサイルを対象とするシステムの制限に関する米ロ間の条約であり、戦域レベルのBMDとは関係がない。また、BMDは、純粋に防御的なシステムであり、地域の平和と安定に影響を与えるものではない。


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