経団連くりっぷ No.130 (2000年8月10日)

1%クラブ世話人会、1%クラブ会員交流会(会長 伊藤助成氏)/7月25日

住民参加の福祉のまちづくり

−秋田県鷹巣町 岩川町長よりきく


今年で設立10周年を迎える1%クラブの世話人会において、伊藤助成氏が第3代会長に就任した。伊藤会長は、活力ある住みよい日本社会をつくるためには、「活力ある高齢化社会の実現」「コミュニティの再構築」「地球レベルでの自然環境の保護」の3つの視点が重要との所信を述べた。世話人会後の会員交流会には100名以上の会員が参加し、秋田県鷹巣町の岩川徹町長より住民参加の福祉のまちづくりの先駆的な取組みについてきいた。

○ 岩川町長講演要旨

  1. 進展する地方自治の新たな課題
  2. 2000年は地方自治にとって重要な年である。半世紀ぶりに改正された地方自治法では、国の法律を超えない範囲で、地方自治体が主体となって住民の生活に関わる行政を独自に行なえるようになった。また4月に導入された介護保険法は、保険者である市区町村に対し、被保険者である住民の意志を反映した措置を講じることとしている。今後、地方自治においては住民参画のシステムをいかに保障するかが課題となっている。

  3. 住民参加の福祉のまちづくり −鷹巣町
  4. 秋田県鷹巣町の人口は約23,000人でその25%が高齢者である。10年前、就任に際し、町中を訪ね歩いた結果「老後の安心を保障して欲しい」との声が強く、高齢者福祉を第一の政策課題とした。そのため、まず、先進的高齢化社会を実現しているデンマークを訪問し、高齢化社会を実現可能としている大前提として民主主義的合意形成の重要性を痛感した。そこで町では、住民が問題意識を持ち、行政と一体となって福祉のまちづくりに取り組む、ボランティアの組織であるワーキンググループを発足させ、現在に至っている。
    ワーキンググループには現在160名以上の住民が参加しており、問題解決にむけた建設的な意見が提案される。行政側はすぐ行なえること、少し工夫が必要、予算等の措置が必要との区別を行なって対応している。自治体としては初の24時間ヘルパー派遣や痴呆老人の部屋に施錠しないこと等は、住民からの介護の人手を要するとの声に応じて人手を確保したために実現可能となった。約5,000円の保険料も住民が決定した。在宅支援拠点のサテライトステーションや在宅複合型施設「ケアタウンたかのす」等福祉施設は全て住民から発案され、建築過程を住民がチェックし、完成させている。

  5. 福祉理念の啓蒙
  6. 福祉とは、個人の人権をどう守るのか、安心して楽しめる生活をいかに保障するかという問題である。近い将来、高齢化社会が到来するアジアで、日本がリーダーシップを発揮するためにも、今から準備する必要があり、日本全国に真の福祉理念を広めると同時に学びの場を創りたい。


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