経団連くりっぷ No.131 (2000年9月14日)

なびげーたー

日中植林協力のモデル・プロジェクトの準備が進行

常務理事 藤原勝博


経団連にとって初めての植林協力プロジェクトを来年春には実現させたい。

一昨年の秋、中国の江沢民国家主席が来日した際、経済界との会合で、主席に対し、今井会長から経済界ベースでの日中植林協力の申し入れをした。この年の夏、中国は長江流域で大洪水があり、また、中国は以前から国を挙げて植林活動に取り組んでいるという背景もあった。この大運動に日本の民間経済界としても一役買いたいという提案である。

それ以来、日本、中国の双方でさまざまな準備を進めて来たが、この程ようやく目処がついてきた。今年に入って中国側の窓口機関が中華全国青年連合会(全青連)に正式に決まり、これを受けて3月、中国委員会・植林協力部会の大國部会長(王子製紙社長)が訪中、全青連の巴音朝魯主席との話し合いで、植林協力の基本線について合意した。つまり、全青連の仲介を得て、長江流域、重慶周辺で植林適地を選定し、5年間500h規模の植林事業を、重慶市および現地自治体との協力の下で実施するというプランである。これに基づき、5月、8月と2回にわたり、専門家グループが訪中、現地視察を重ね、候補地を2ヵ所に絞り込むことができた。今秋、最後の現地調査を行ない、同時に植林実施の具体的方法について重慶市および現地行政当局との間で交渉を行ない、最初の植林地点を1ヵ所に絞り込む予定である。

その後、中国の現地側と具体的な植林計画を共同でつくり、来年春にはスタートさせたいと考えている。これと並行して、国内で資金面の準備も始めなければならない。モデル的な環境植林という性格から、経団連会員企業をベースに幅広く経済界に募金を働きかけていきたい。

植林は息の長い事業である。中国では2050年まで長期計画を立て、砂漠の緑化や農地を森林に戻す運動を展開中である。単なる農業、林業育成ということではなく、治山治水、環境を含めた生態環境改善という大方針のようである。

日本からしても、12億人が住む中国大陸の自然環境、生態系の変化は他人事ではない。それは、日中二国を越え地球規模の環境、食料、エネルギー問題にも密接につながっている。

一方、日中間では、多数のNGOによる草の根レベルでの植林協力、学者の交流、中央・地方政府の協力も既に始まっている。その全体像を把握すべく、昨年秋に東京で「日中植林フォーラム」を開催し、日中両国の関係者が一堂に会して、情報交換を行なった。

今回、経団連ベースの具体的な植林事業を進めることにより、これが一つのモデルとなり、将来、中国の各地でさまざまな植林協力プロジェクトが立ち上がることを期待している。今後50年、100年にわたる中国大陸の生態系、環境の改善に日本もいくばくか寄与できればと願う次第である。また、それは大きな目でみれば日本の国民にとっても大いにプラスに働くことであろう。


くりっぷ No.131 目次日本語のホームページ