経団連くりっぷ No.131 (2000年9月14日)

第48回北海道経済懇談会/7月26日

21世紀の北海道の発展に向けた方策

−道経連と懇談


「21世紀の経済新生と北海道の発展に向けた基盤作り」をテーマに、経団連・北海道経済連合会(道経連)共催の懇談会が札幌市にて開催された。当日は今井会長、片田・香西・上島の各副会長、宮部税制共同委員長が出席し、150名の参加の下、闊達な意見交換が行なわれた。また、懇談会翌日、札幌市リサイクル団地、江別市町村農場バイオガスプラントを訪問し、循環型社会の構築に向け廃棄物の中間処理を行なう施設などを視察した。

  1. 北海道側発言要旨
    1. 開会挨拶
      泉 誠二道経連会長(北海道電力会長)
    2. 道内の経済は、一部産業に持ち直しが認められるものの、設備投資、個人消費ともに前年を下回り、雇用状況も全国に比べ厳しい。道経済再構築のため、財政出動による支援策を強く望む。有珠山噴火の影響は観光産業をはじめ道全体に波及している。脆弱性が露呈した北海道の輸送体系について、特に北海道のライフラインとしての高速道路の北回りルート整備などを望みたい。
      北海道の産業構造は二次産業、特に製造業の比率が低く脆弱であり、新規産業創出により二次産業の比重を高める必要がある。

    3. 来賓挨拶
      堀 達也 北海道知事
    4. 道経済は生産活動などに改善の動きがあるものの、民需主導の自律的回復には至っておらず、雇用情勢も厳しい。
      公需に大きく依存してきた道の経済構造は自立型構造への転換を迫られている。1999年度に「経済構造改革の展開方策」を策定し、産業クラスター活動への支援、人材育成など具体的な施策を実行することとしている。幸い、産業クラスター、北海道産学官協働センター開設など道経済活性化に向けた動きは心強い。行政として、民間の創意や努力を最大限に活かすべく、効果的な施策の立案・推進に傾注する。
      有珠山噴火については、洞爺湖温泉地域も漸く避難指示が解除され、復興に向け動いている。道としては「ガンバル、フンバル、北海道」をキャッチフレーズにした物産・観光キャンペーンを引き続き展開する。

    5. 北海道経済の現状と課題
      大森義弘 道経連副会長(北海道旅客鉄道会長)
    6. 自律的回復に向けた動きが強まる全国の景気動向とは対照的に、北海道の経済状況は有珠山噴火による影響もあり、景気回復基調にはない。昨年度前半は公需の政策効果により景気持ち直しの動きが見られたが、現在、景気は足踏みしている。
      道の完全失業率は全国平均の4.8%を大きく上回る6.5%であり景気回復の遅れにより零細企業などで倒産が増加傾向にある。道経済は公共投資に対する依存度が極めて高く、回復基調に戻すためにも当面は公共投資に頼らざるを得ない。
      北海道における観光関連消費額は1兆円に上り、農業粗生産額に匹敵する重要な産業であるが、有珠山噴火により観光客減が有珠山周辺地域以外にも波及し観光産業に影響をあたえている。経団連には、「有珠山以外は安全」とのPRをお願いしたい。

    7. 北海道における金融と地方財政について
      武井正直 道経連副会長(北洋銀行会長)
    8. 1997年11月に拓銀が経営破綻した後、北洋銀行への営業譲渡が円滑に進んだこと、北洋銀行と札幌銀行が2001年春に持ち株会社設立で合意したことなどにより、金融環境は比較的落ち着いている。道金融の大きな特徴は、郵貯の占める割合が大きいことである。拓銀破綻後、個人預金は郵貯に大きくシフトし、道内個人預金19兆円の54%を占めている。経団連には、郵貯の月別情報公開などの働きかけをお願いしたい。
      「景気回復か財政再建か」の議論については、有珠山噴火、雪印の問題などに鑑み、当面は公共投資に頼らざるを得ない。北海道新幹線早期着工など将来に夢を持てる大型プロジェクトに期待している。

    9. 北海道の国際化に向けて
      我孫子健一 道経連副会長(北海道空港社長)
    10. 北海道はアジアと欧州を結ぶ結節点に位置しながら、新千歳空港等を十分に活用できていない。道経連としては新千歳空港の国内2地点経由便の可能性を追求している。
      国際熱核融合炉(ITER)誘致に関しては、豊かな自然環境を持ち、北大をはじめ優秀な工学系技術者が採用可能なことなどから、苫小牧東部地域が最適地であると確信しており、2001年のサイト決定に向け活動している。
      また、近年、台湾等で北海道観光がブームであるが、これを継続、発展させるためには、海外観光客のニーズを把握し、受入方法等について検討していく必要がある。
      今後、国際交流の結節点となりうる北海道の地勢的優位性を活かすべく、フロンティア・スピリットに立ち返り、国際交流意識を醸成することが必要である。

    11. 北海道の活性化に向けての取り組み
      横山清氏 道経連副会長(ラルズ社長)
    12. 北海道では道内経済の自立的発展に向けた取組みとして「北海道産業クラスター構想」を推進している。同構想は「食・住・遊」という北海道が比較優位にある産業を核にして、関連企業や産業を内発的に育成・発展させる長期的活動である。
      地方においての研究開発は、地場に根差した現実的な問題解決を行ない、その研究成果を事業化・商品化することが重要である。また、産業活性化のためには人材育成が必要不可欠である。北海道の場合、基幹産業の一つである農業において国際競争力を有する農業経営者を育成するため、農業高等専門学校の創設を国に働きかけている。

  2. 経団連側発言要旨
  3. 片田副会長より今後の金融政策と会社法制の課題について、また宮部税制共同委員長より21世紀を展望した税制改正に向けてについて発言がなされた。さらに、上島副会長がアジア・極東ロシアとの経済交流について発言した後、香西新副会長より交流と連携による北海道の振興について説明がなされた。
    最後に今井会長より、北海道におけるさまざまな取組みを踏まえつつ、経団連として経済新生に向け積極的に取り組んでいくとの総括があった。


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