経団連くりっぷ No.131 (2000年9月14日)

人材育成委員会(委員長 浜田 広 氏)/8月7日

「人づくり」について石川嘉延静岡県知事と懇談


人材育成委員会では、先般、提言『グローバル化時代の人材育成について』をとりまとめたが、これに関連して、石川嘉延 静岡県知事から「人づくり」について経団連と意見交換したいとの申し入れがあり、懇談した。当日は、静岡県側から石川知事、杉田教育長、吉岡企画部長、経団連側は浜田委員長、森本同企画部会長、田中社会本部長が出席した。また、石川知事より、産業界に人づくりへの理解・協力を求める要望書が手渡された。

  1. 石川知事発言要旨
    1. 静岡県の人づくりへの取組み
    2. 今日の人材育成のあり方は、根本的な制度疲労を起しており、再構築が必要である。そこで、静岡県は「人づくり百年の計委員会」(会長:草柳大蔵氏)を設置して、昨年10月に提言「意味ある人をつくるために」をまとめた。「意味ある人」とは「何かができる人」「精神的に自立している人」「思いやりのある人」と定義し、その育成に向けた方策をとりまとめた。その内容は、経団連の提言とほとんど一致している。
      問題は、いかにアクションを起こすかである。静岡県では、この提言の考え方や活動事例を1冊の本にまとめて刊行するとともに、人づくりのための“伝道師”を育成し、地域活動等を通じた県民への普及・啓発を行ない「静岡県ではいつも人づくりの話が交わされている」ようになることを目指して幅広い県民運動を進めている。
      また、県庁では、家庭教育を支援する職場環境を構築するために、職員が子供の学校行事に参加するための休暇取得を奨励し、半年間で約60%の職員が学校行事に何らかの形で参加するようになった。職員の子供を対象に職場見学会も開催している。

    3. 産業界への要望
    4. 経団連の提言には100%共感しており、今後これをいかに実現させるかが重要である。地域社会の中で果たす企業の役割は非常に大きい。例えば、男性の育児参加等、従業員が人づくりに参加するためには、まず企業経営者の理解が不可欠である。今後、家庭・学校・地域社会・行政の役割を踏まえ連携するために、産業界の理解・協力を得たい。

  2. 経団連側発言要旨
    1. 教育について議論する段階は過ぎた。これからは、教育を立て直すために「あなたは何をしていますか」と問われるようになるべきである。

    2. 地方行政は個性を発揮すべきである。教育に競争原理を導入して、各県をランク付けしてはどうか。

    3. 思いやりや自立心を育成するために、子供に自然の中でしっかりとした経験を積ませる必要がある。例えば中学生全員に一定期間自然体験をさせる「皆農制」が考えられる。

    4. IT革命により、企業の人事・雇用システム(学歴偏重、年功序列等)が大きく変化していることを、子どもや母親に理解してもらう必要がある。

    5. カリフォルニアのように、企業人がボランティアで子供に補習を行なうこと等を通じて、企業は教育に協力できるのではないか。


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