経団連くりっぷ No.131 (2000年9月14日)

東亜経済人会議日本委員会2000年度総会(委員長 香西昭夫氏)/7月25日

陳水扁新総統のもとでの台湾の行方についてきく


東亜経済人会議日本委員会では、7月25日、2000年度総会を開催し、1999年度事業報告・収支決算、ならびに2000年度事業計画・収支予算を審議し、原案通り承認した。また当日は、羅福全台北駐日経済文化代表処駐日代表から、「陳水扁新総統の誕生と今後の台湾の行方」について説明をきいた。

○ 羅福全駐日代表説明要旨

  1. 3月18日の総統選挙で陳水扁氏が当選したのは、決して偶然の結果ではなく、戦後の経済発展と12年間の李登輝前総統時代に進展した民主化という「台湾経験」がもたらした帰結であった。得票率こそ39.6%であったが、その後の世論調査(6月20日)では、陳総統への支持率は80%となっている。新政権は、政党を超えて国のために尽くすとする「全民政府」である。唐飛行政院長を主班とする内閣の閣僚は、3分の1が民進党出身者、3分の1が国民党出身者、残り3分の1が学者および民間人となっている。国会にあたる立法院では与野党が逆転しているが、一般民衆の陳総統に対する支持は高い。試行錯誤を繰り返しながら民主政治が定着していくものと考える。

  2. 陳総統は、施政方針の柱として、
    1. クリーンな政治を行なう、
    2. 台湾を緑のシリコンアイランドにする、
    3. 教育改革を行なう、
    等を掲げている。 1. に関しては、総統選挙中、金権政治一掃のキャンペーンを行なった。 2. は、持続可能な発展を目指して環境に配慮しつつ、知識集約型産業の発展に注力したいということである。 3. に関しては就任演説の中で、台湾の最も重要な資源は人材であると位置づけたうえで、健康で積極性のある活力に満ちた新たな教育体制を確立したいと述べている。

  3. 台湾は2,300万人の人口を抱えており、一人当たりのGDPも約14,000ドルとOECD諸国に伍する存在である。国交を結んでいる国の数は少なく、国際情勢も厳しいが、実務外交を通じて生存・発展する空間を求めている。WTOにも今年中に加盟したい。両岸関係については、陳総統は、大陸が武力を行使する意図がない限りにおいて、独立を宣言しないこと、国体の変更につながるいかなる組織変更も行なわないこと、憲法も国号も変えないことを明言している。

  4. 日台経済関係は緊密で、貿易額は425億ドルにのぼり、人の往来も活発である。昨年の台湾大地震の際には、日本からも緊急援助隊が来てくれたほか、多くの義援金を寄せていただいた。政権は交代したが、対日関係については「古い幹に新しい花を咲かせたい」という気持ちである。


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