経団連くりっぷ No.131 (2000年9月14日)

日本ベトナム経済委員会2000年度総会(委員長 宮原賢次氏)/8月24日

第9回党大会に向けたベトナム情勢

−早稲田大学 白石教授よりきく


日本ベトナム経済委員会では、8月24日、2000年度総会を開催し、1999年度事業報告・収支決算、ならびに2000年度事業計画・収支予算を審議し、原案通り承認した。当日は、早稲田大学アジア太平洋研究センターの白石昌也教授より、第9回党大会に向けたベトナムの政治・経済情勢ならびに今後の動向について説明をきいた。

○ 白石教授説明要旨

対外関係については、昨年12月の中越陸上国境画定協定の調印、今年7月の米越通商協定調印が目立った動きである。また、今年に入ってからラオスにおいて爆弾テロ事件が発生している。これは、反ベトナム分子による行動との報道も有り、懸念される動きである。

国内的には、1997年にレー・カー・フィエウ書記長の指導体制が発足し、そのもとで、保守派・軍部の色彩が強い新陣容が形成された。さらに、フィエウ書記長ら保守派は、自らの影響力を強めるために、ライバルと目されるドー・ムオイ党中委顧問、ファン・テー・ズエト政治局員、ファン・ヴァン・カイ首相グループに対して人事面での攻勢をかけているといわれている。

来年3月頃に予定されている第9回党大会以降の人事については、フィエウ書記長の続投がほぼ確実視されている。また、書記長が国家主席を兼任する説や党・政府3役が留任し首相のみが交替または首相と国家主席が交替等の憶測もある。全体としては、政治局の現委員の多くが留任し、新たに抜擢される人材では軍の勢力が強まるという可能性がある。最近、保守派と改革派の乖離が徐々に広がっているとの見方もあり、心配される。

8月に第9回党大会提出の政治報告草案が公表された。従来、草案は党大会の3、4ヵ月前に公表されていたことに比べると、今回は異例の早さといえる。草案とりまとめにあたり議論された主要な点は、

  1. 国際情勢認識、
  2. 社会主義への過渡期における所有制度と経済セクターの評価、
  3. 独立自主経済の建設と国際経済への参入をめぐる問題、
  4. 党建設活動、
の4つである。

草案の中で経済政策については、1996年から2000年の5ヵ年計画の実績では、一部の計画指標が達成できなかったが、1991年から10ヵ年の成果を総体的にみれば大きな成果が出ていると評価している。また、今後の経済発展計画としては、2020年までに工業国となり、2010年のGDPを2000年比で倍増(年平均成長率は7%を予測)、2010年に農業労働人口を約50%(現状は80%)にするとしている。


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