貿易投資委員会 総合政策部会(部会長 團野廣一)/8月31日
WTO新ラウンド交渉立上げに向けた最近の動向と今後の展望について、外務省国際機関第1課の伊原純一課長より説明をきいた。このなかで、伊原課長は、包括的な新ラウンドの早期立上げに向けては、解決が困難なさまざまな障害があると述べた。
九州・沖縄サミットにおいてG8首脳は、WTO新ラウンドの年内立上げに向けて努力することで合意し、その旨が共同コミュニケに盛り込まれた。しかし、新ラウンドの年内立上げはなかなか困難な情勢にある。それは、昨年11月のWTOシアトル閣僚会議は交渉のアジェンダをめぐる各国の対立が主要因で決裂したが、これが今日に至るまで基本的には解消されていないためである。
農業、サービスといったウルグアイラウンド交渉の合意済み事項を中心に、限られたアジェンダで新ラウンドを立上げるべきであるという立場(米国等)と、投資、競争などを含んだ野心的なものとすべきであるとの立場(日本、EU等)が対立している。また、環境、労働といった今まで貿易と直接関係がなかった事項をどこまで交渉の対象とするかについて、積極的な姿勢を示す米欧と、消極的な途上国の対立がある。さらに、わが国が求めているアンチダンピング協定の見直しについては米国が強く反対している。
わが国は包括的ラウンドの立上げを主張している。しかしながら、以下のような困難や不確定要因がある。
包括的なラウンドを立上げて、新たなルール作りも含めWTOの機能を強化していくことは極めて重要である。しかし一方で、包括的ラウンド立上げの難しさをも認識し、現実にも即した戦略を考えていく必要がある。