経団連くりっぷ No.132 (2000年9月28日)

なびげーたー

資源循環型社会の構築を

環境・国土本部長 林  正


資源循環型社会の構築に向け、廃棄物・リサイクルビジネスが産業として確立するためには、ハード、ソフト両面からの環境整備が必要である。

「循環型社会形成推進基本法」をはじめとする廃棄物関連法制度が先の国会で成立し、わが国は資源循環型社会の構築に向けた転換期に入った。今後、資源循環を社会全体として効率的に進めていくためには、現行の社会経済システムとの調和を図ること、すなわち、リサイクル・廃棄物関連産業がビジネスとして成り立ち、発展していくために必要な環境整備を行なうことが重要である。こうした観点から、経団連は産業新生会議の場を通じて、ハード、ソフト両面からの環境整備を求めている。

ハード面については、廃棄物をリサイクルし再資源化する「新資源産業センター」の創設や最終処分場の整備などが必要である。この新資源産業センター構想では、効率的なリサイクル・処理の推進に加えて、国・地方公共団体、研究機関、産業界が連携・協力して、リサイクルに関する先端的研究から社会システムづくりまで、幅広い研究課題に取り組み、得られた最先端の研究成果を世界に発信することを目標としている。

こうしたセンターをつくる意義は、センター内における諸施設間での排熱有効利用、スケールメリットによる処理費用の低廉化等の効率化が期待できることにある。港湾などを活用すれば運搬コストの低減も考えられる。目に見える形で資源循環を進めることで、国民的な環境マインドの醸成につなげることも期待できる。

国・地方公共団体の積極的な参画を得て最終処分場の確保に取り組むこともこの構想の重要な要素である。今後、国をあげてリデュース・リユース・リサイクルを最大限に進めても、社会全体でみれば最終処分量がゼロになることはあり得ないからである。現状においては、周辺住民をはじめとする利害関係者の調整が難航するため最終処分場の確保は困難であるが、こうした閉塞状況を打開するきっかけとしたい。

廃棄物の処理・処分に係る効率性を上げることも、リサイクルビジネスが既存の経済システムに産業として組みこまれ、持続的に発展していくために重要である。そのために必要な制度改革を行なうことが、ソフト面の環境整備である。たとえば、廃棄物の定義や区分を見直し一般廃棄物と産業廃棄物を別々に処理するのではなく一括処理することや、広域処理を促すような制度改革を行なえば、スケールメリットによる効率的な資源循環が可能となる。

今回の経団連の提案は、こうしたハード、ソフト両面からの取組みを進めることにより、資源循環型社会構築に向けた先進的モデル事例をつくるために打ち出したものである。産業界の自主的な廃棄物対策を一層進めるためにも、思い切った政策措置が必要である。


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