経団連くりっぷ No.132 (2000年9月28日)

国際協力委員会 政策部会(部会長 佐藤和夫氏)/9月1日

IT時代の国際金融公社の役割

−国際金融公社(IFC)アサード・ジャブレ副総裁よりきく


国際金融公社(IFC)のアサード・ジャブレ副総裁を招き、IFCの新戦略分野や日本企業との関係について説明をきいた。ジャブレ副総裁は、今後、IT、インフラ、金融、中小企業育成、社会分野を中心に民間部門との競合を避けて中所得国に重点を置く方針を示すとともに、日本が重要なパートナーであることを強調し、人材面での協力にも期待を表明した。

○ アサード・ジャブレ副総裁説明要旨

  1. IFCをとりまく環境の変化
  2. ここ1年、世界経済の全般的な改善が見られる。特に中南米では、ブラジルの通貨切り下げにも関わらず危機が深刻化しなかった。アジアも回復しつつあるが、まだ脆弱さが残る。こうした中、IFCは堅実な投融資活動を続けている。昨年度(1999年7月〜2000年6月)は275のプロジェクトに総額54億ドルの投融資を行なった。
    IT革命により先進国と発展途上国との間のデジタル・デバイドのリスクが増大しており、発展途上国の情報インフラの体系的・効果的な整備が急がれる。他方、発展途上国は、IT分野では一足飛びに新しい技術に追いつくことができる。インドが好例である。IFCは中小企業への支援等を通じてIT関連事業を支援していく。
    先進国の間では、開発援助をめぐって、グローバル化が貧しい国を犠牲にしているので援助が必要という議論から、民間にすべて任せるべきという援助無用論まで、さまざまな意見が交錯している。IFCは、いかに加盟国やクライアントにとって意味のある存在でいられるかが問われている。

  3. IFCの新たな戦略
  4. 今後、IFCは特にIT、インフラ、金融、中小企業育成、社会分野の5分野に重点を置く。また民間企業との競合を避けるため、中所得国、中小企業にターゲットを絞り、民間では難しい輸送、上下水道、郵便等のプロジェクト推進に特化する。さらに経済危機で脆弱さが明らかになった国内金融制度の強化にも協力する所存である。
    IFCは大きな機関ではない。したがって途上国で良いビジネスが成立することを示すことにより、民間投資をひきつける触媒的機能を強化していく。さらに、環境、社会、コーポレート・ガバナンス等の分野のスタンダードづくりにもリーダーシップを発揮したい。
    サービス向上の一環として、各地域部局の長を現地に常駐させ、よりクライアントに近いところでニーズに合った活動を行なえるように組織を改革した。

  5. 日本とIFC
  6. 日本政府は特に技術支援の面で、従来からIFCの強力なサポーターである。今後はIT分野での日本の協力に期待している。
    日本企業はこれまで40カ国で250のIFCプロジェクトに投資するなど、重要なパートナーである。金融機関もIFCの資金調達に協力している。有能な日本人スタッフも増えてきたが、企業からの出向者も含めさらに増えることを望む。


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