輸送委員会 企画部会(部会長 横山善太氏)/9月6日
本年2月より改正航空法が施行されたのを受け、航空運賃の自由化など航空業界をめぐる規制緩和の動きが加速化する一方、近隣のアジア諸国等では国際空港の整備が急速に進んでいる。こうした状況下、わが国が人流・物流面で国際競争力を保持していくうえからは、ハード・ソフト両面における航空インフラをいかに整備すべきかが検討課題となっている。そこで、国際航空運送協会(IATA)アジア太平洋地区広報マネジャーのアンソニー・コンシル氏から、空港インフラ整備の国際比較に基づき、今後のわが国空港整備のあり方について説明をきくとともに意見交換を行なった。
1999年の世界の航空産業全体の収支について見ると、1,400億ドル強の収入に対してほぼ同額の支出があり、利益のマージンが非常に小さい産業であることを示している。例えば、航空機の座席利用率に対する損益分岐点の上昇を受けて、業界全体の収益は年々低下している。また、空港使用料が増加し、全体のコストの9%以上を占めるなど、航空産業をめぐる環境は厳しさを増している。
その一方、世界の航空需要は増加の一途をたどっており、1998年に14億6,000万人を記録した航空利用者数は2003年には17億6,000万人以上に達すると予測されている。特に国際線の伸び率は年平均5%以上と顕著であり、2003年に約5億8,000万人、2013年には1998年の2倍に相当する9億人もの需要が見込まれている。
こうしたヒトの流れを地域別に見ると、国際線乗客の4分の1以上がアジアを発着地としており、世界の航空需要に占めるアジアのウェイトが高まりを見せている。
しかしながら、空港利用者数でみると、アジアはその旺盛な需要を満たしていない。国際線・国内線合計総利用者数については、アトランタやシカゴに水を開けられており、アジアでトップ10に入っているのは羽田空港のみである。また、国際線については、香港、シンガポール、成田がヒースローやシャルル・ドゴールの後塵を拝している。
アジア内では羽田の総利用者数が年間5,000万人以上と、2位のソウル空港3,000万人強を大きく引き離している。しかし、日本は出国者が1,640万人を記録する一方で入国者は440万人に過ぎず、著しいギャップが生じている。
また、貨物については、成田の取扱量は世界でも第4位に位置しており、第2位の香港とともに重要な位置を占めている。この結果、世界の国際航空貨物に占めるアジアの割合は43%以上を示しており、国際貨物の今後の動向が注目される。但し、アジアがこのまま成長を続けた場合、航空貨物を取り扱う日本のインフラがそのペースに伍することができるかが課題である。
近年、アジアでは1998年に香港、クアラルンプール、1999年に上海・浦東が開港したのをはじめ、ソウル・インチョンが来年春の供用開始を控えるなど、国際空港の整備が急速に進んでいる。これらの空港においてはいずれも24時間運営が基本である。規模も1,000ha以上で3,000〜4,000m級滑走路を2本以上備えており、14億〜90億ドル程度の建設費で整備されていることが特徴である。
一方、日本においては成田が710haであり、アジアの主要国際空港としては極めて小さい。成田は2002年までに2,180mの平行滑走路を供用予定であるが、容量が限られ、6時から23時までしか運営しないという欠点もある。また、関西国際空港についても容量不足、高い建設コスト(1期および2期事業合計3兆円以上)に加え、アクセスの悪さ等から事実上24時間運営できない使い勝手の悪さが指摘されている。
日本の空港はハブ機能を有しないのみならず、アジアへの接続性も低く、その経済力に比して航空ハブの欠如は著しい。年間1億人以上の旅客を捌くターミナル容量を備え、24時間運営、低コスト建設が世界の空港の潮流となる中、日本は国際的な重要性を益々失っていく惧れがある。
世界的なレベルを有する空港とは、乗客および航空会社という二つの顧客のニーズに応えることのできる空港である。乗客の視点からその要件を見てみると、