経団連くりっぷ No.133 (2000年10月12日)

経団連意見書/9月14日

「電気通信分野における競争促進法の早期実現に向けて」を建議


経団連では、本年3月、インターネット時代、通信・放送融合時代に対応できるよう、現行の情報通信関連法制を利用者利益の確保、自由かつ公正な競争の確保を目的とする「競争促進法」の体系に転換することを提言した。産業界の要望に応える形で、電気通信審議会等ではIT革命推進に向けた電気通信分野の競争政策のあり方の検討が開始された。そこで、政府での議論の本格化を踏まえ、電気通信分野の競争政策の検討にあたり喫緊に講ずべき措置について、標記提言をとりまとめ、政府・与党等関係方面に建議した。以下はその概要である。

  1. 実効的な競争促進策の早急な検討
  2. IT有効活用の基盤となる、低廉で多様な情報通信サービスが、行政主導ではなく、事業者間の自由で公正な競争を通じ、利用者ニーズに即応して提供される環境を一刻も早く整備する必要がある。
    そのためには、第一ステップとして、緊急度が最も高い課題である電気通信分野における競争の促進に向けた法整備を早急に行なうべきである。

  3. 競争促進法の整備
    1. 「事業規制法」から「競争促進法」への転換
    2. インターネットの利用等に際し、広帯域の通信サービスを米国並みの料金で利用できるようにすることが急務である。そのためには、電気通信市場のあらゆる分野において、利用者が幅広い選択肢を持てるよう、多種多様な事業者が、公正競争条件のもとで、自己責任原則に基づいて自由に創意工夫を発揮できる枠組みを整備する必要がある。
      電気通信分野の競争政策の検討に当たってNTT法など、電気通信関連の法制ノついて、行政が事業者の適正な事業運営を図る「事業規制法」ではなく、利用者の利益と自由かつ公正な競争の確保とを目的とする「競争促進法」の法体系へ転換することが急務である。

    3. 市場支配力に着目した規制
    4. 今後は、市場シェア・ボトルネック設備の保有等の基準を踏まえて、市場支配力がある場合とそうでない場合とで規制を切り分けるべきである。市場支配力があり競争が進展していないと認められる場合には、必要な規制(上限価格規制、適切な接続ルールの適用、一定の情報開示義務、内部相互補助規制等)を受けるが、競争が進展すれば規制が緩和されるという、インセンティブ規制とすることが望ましい。
      他方、競争が進展している場合には、基本的に自由に事業展開ができ、問題が生じた時点で事後的に規制を受けるものとすべきである。

  4. 中立的な立場からの競争状況の監視
  5. 電気通信分野における自由かつ公正な競争を実効あるものとするには、競争促進法の整備と併せて、行政が事業者や政治から中立的な立場で電気通信市場における競争ルールの策定や競争状況の監視・維持等を行なう必要がある。将来的には、欧米・アジア諸国と同様、独立規制機関において競争確保を図るべきである。

  6. NTT法の見直し
  7. NTTについては、純粋の民間事業体として公正な競争ルールの下で、自己責任原則に則った経営ができるようにすることが最も望ましい。国が直接、経営に介入する規制(役員認可、事業計画認可、定款変更認可、新株発行認可等)は早急に廃止し、公正競争の確保やユニバーサル・サービス確保に必要な事項等を新しい競争促進法に吸収、統合する必要がある。

  8. 議論の透明性の確保
  9. 電気通信に係わる制度・政策の検討にあたっては、あらゆる審議会等の議論について、小委員会等を含め、審議の公開や詳細な議事録の迅速な公表を図るとともに、パブリックコメント方式により答申等の原案に対する国民の意見を聴取し、行政としての考え方を示した上で最終決定すべきである。


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