経団連くりっぷ No.134 (2000年10月26日)

なびげーたー

むつ小川原再建への新たな取組み

常務理事 永松惠一


「新むつ小川原株式会社」が、8月4日に発足した。日本経済の発展の方向、克服すべき制約条件等を視野に入れ、着実な企業経営を行なっていくことが課題である。

1971年に設立され、今日、破綻を迎えた「むつ小川原開発株式会社」の30年間は、高度成長の終焉、石油危機、そしてバブル崩壊という歴史に翻弄された日本経済の縮図そのものでもある。旧会社の破綻の原因については、すでにさまざまな分析が行なわれているが、何といっても資金の大半を借入金に依存しながら用地の先行取得を進め、また県の財政力との関係から膨大な公共事業負担金を支払ってきたことが大きい。激変する経済環境の中で見直しができなかった計画の硬直性、第3セクターに見られる責任体制の不明確さ等も指摘される。

旧会社の危機は何度となく訪れ、1998年10月には、自民党に「むつ小川原開発問題プロジェクトチーム」が発足し、再建策の早期とりまとめに着手したが、同年12月、旧会社は、金融機関への支払い財源が確保できず、万策尽きた形で元利金支払いの一時棚上げを要請した。約2,300億円の借金を抱えた事実上の倒産である。

その後、関係者の協議が連日のように開催され、経団連においても会長副会長会議、むつ小川原開発部会を中心に、真剣な議論を重ねてきた。利害が錯綜し、関係者の意見もさまざまであったが、1999年12月、2000年度予算編成との関連で、むつプロジェクトに関する閣議了解が取りまとめられ、その中で「わが国に残された貴重な未利用地であるむつ小川原地域の重要性に鑑み、むつ小川原開発株式会社を清算し、借入金に依存しない形での土地の一体的確保、造成、分譲を行なう新会社を設立する」という抜本的処理策が示された。同時に閣議了解では、経団連の協力により新会社の事業が円滑に進められることを前提に、国(日本政策投資銀行)の出資が行なわれることとなった。

旧会社の清算と新会社の設立にあたっては、国・県による債権放棄と現金・現物出資、民間金融機関による債権放棄と現物出資、旧会社株主の株主権放棄、そして新会社の経営安定のため、民間事業会社による新会社支援ファンドへの拠出、用地賃借、人的支援などギリギリの協力と貢献を行なって頂いている。

このような貢献と過去の反省を踏まえた上で、新会社は僅か12名の役職員でスタートした。たまたま、風力発電事業、液晶産業の進出が決定するとともに、花卉工場が竣工するなど、幸先の良い船出となっている。資源・エネルギー・環境問題の解決、また情報産業など有望分野の開拓等、日本経済の再生を目指すプロジェクトは多々考えられる。今度こそ、むつ小川原地区が、地に足のついた、安定成長を目指す日本経済の縮図となるよう、関連プロジェクトの誘致に取り組んでいきたい。


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