経団連くりっぷ No.134 (2000年10月26日)

経団連意見書/10月17日

「21世紀のわが国観光のあり方に関する提言」を建議


経団連では、地域活性化に果たす観光の重要性、また、観光産業による経済的波及効果の大きさなどに着目し、国土・住宅政策委員会において、昨秋以来、有識者からのヒアリングや地方視察などを通じて、わが国観光のあり方について具体的な検討を重ねてきた。一方、政府の観光政策審議会においても、本年末を目途に、21世紀初頭における観光振興方策について答申する予定となっている。
そこで、経団連としても、産業界の意向を答申ならびに政府の施策に反映させるべく標記提言をとりまとめ、10月17日の理事会の承認を得て、政府・与党等関係方面に建議した。以下はその概要である。

  1. 今なぜ観光か −観光の意義と重要性−
  2. 【産業としての重要性】
    観光は、今後、ゆとりや潤いのある生活を求める国民意識の高まりや、経済的・時間的に余裕のある高齢人口の増大に伴い、21世紀の成長産業になるものと期待

    【地域振興に果たす役割】
    自然や歴史など地域が有する資源を活用した観光振興は、まちづくりの重要な柱であると同時に、地域経済の活性化をもたらす効果

    【社会の安定化の意義】
    観光を通じた余暇活動の充実は、国民の活力、創造力を生み出す源泉。また、自然との触れ合いは情操教育の一環となり、少年犯罪に対する一つの処方箋として期待

    【国際的な相互理解の促進に果たす役割】
    観光を通じた諸外国との人的交流は、日本人の「内なる国際化」、国際的な相互理解の増進、平和の促進にも大きく寄与

  3. わが国観光を取り巻く現状
  4. 21世紀におけるわが国観光のあり方 〜あたらしい国づくりのために〜
    1. 誰もが楽しめる観光(ユニバーサル・ツーリズム)の推進
    2. 高齢者や身体障害者等が困難を伴うことなく移動できるようなバリアフリーの観光まちづくりに取り組むこと(ユニバーサル・ツーリズム)が急務

    3. 自然環境や歴史遺産に配慮した持続可能な観光(サステイナブル・ツーリズム)の推進
      1. 文化遺産保全、まちなみ整備、景観保存のための取組み強化
        欧米の先進事例に範を取り、文化遺産等を貴重な観光資源として保全し、「持続可能な観光」を進めることが重要

      2. グリーンツーリズムの推進
        地域の環境や文化と結び付いたグリーンツーリズム(自然・農林漁業体験観光)は、都市と農林漁村の人的交流の促進、山村地域の活性化、情操教育等の側面から重要

      3. 環境に対する意識の向上

    4. 国際観光交流の推進
      1. 基本的なインフラ整備
        空港、駅等の観光関連施設において、外国人観光客の視点に立った外国語表示等の整備が不可欠

      2. 「高コスト観光」の是正
        国際価格競争力強化に向けた日本国内旅行商品の多様化(宿泊メニューの多様化・低廉化、多様な観光ルートの提供等)

        航空運賃引下げに向けた航空利用者負担の軽減

      3. 産業観光等の推進
        産業遺産、工場遺構等を観光資源とする「産業観光」の推進は、わが国発展の歴史を学ぶためにも重要

    5. 観光振興のための環境整備
      1. 観光関連情報の受発信機能の強化
        観光情報インフラの整備(各地のタイムリーな観光情報の発信、海外向け観光専門番組の放送等)

      2. 広域的かつ横断的な連携体制の構築
        省庁横断的な観光政策の実施(総合調整機能の強化に向けた首相直属の観光特別補佐官の創設)
        観光振興における産学官連携体制の構築(大学における観光教育の充実・人材育成、まちづくりNPOとの連携等)

      3. 休暇を取得しやすい社会環境の整備に向けて
        「ハッピーマンデー」の拡充
        長期(2週間以上)休暇制度確立に向けた企業側の努力


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