経団連くりっぷ No.134 (2000年10月26日)

平沼通産大臣との懇談会/10月4日

経済新生のための政策運営をめぐり懇談


経済四団体では、平沼通産大臣との懇談会を開催した。通産省から、平沼大臣のほか坂本総括政務次官、伊藤政務次官ほか幹部が、また、経済四団体から、今井経団連会長、稲葉日本商工会議所会頭、奥田日本経営者団体連盟会長、水口経済同友会副代表幹事ほか幹部が出席した。

  1. 平沼通産大臣挨拶要旨
    1. 経済の転換期にあって、企業家精神の存分な発揮を可能とする環境整備に取り組む。

    2. 産業新生会議では年内に経済構造改革のための行動計画をとりまとめる。産業界の一致した要望である企業関連法制の改革にスピーディに対応する。

    3. 10月中下旬には経済対策・補正予算をまとめる。景気を安定回復軌道に乗せるには積極的な施策が必要である。中小企業については、一般信用保証制度の拡充や倒産・災害等に係る対応策を講じる。

    4. WTO新ラウンド立上げと並行して自由貿易協定(FTA)の具体化に取り組んでいる。シンガポールとは、10月22日の首脳会談で交渉開始に合意する予定である。

    5. IEA、APEC等の場を活用して、消費国における省エネ推進とエネルギー源多様化に向けた協力の必要性を訴えていく。産油国・消費国対話の場でも主張すべきは主張し、原油価格の安定に努力する。

  2. 経済団体側発言要旨
    1. 稲葉日商会頭
      1. 補正予算の早期成立・執行が必要である。その際、特に中小企業のIT化促進を政策面で後押し願いたい。

      2. 法人事業税への外形標準課税導入には、引き続き反対していくので、支援願いたい。

      3. 相続税・贈与税の最高税率の引下げや税率構造の見直しを行なうとともに、贈与税の基礎控除の大幅引上げ、事業用資産に対する事業承継税制の創設等が必要である。パソコン税制、中小企業投資促進税制、中小企業技術基盤強化税制の延長・拡充、会社分割税制の創設等も実現いただきたい。

      4. 確定拠出年金法案の早期成立・施行が望まれる。各企業年金制度間の移行等が労使合意で円滑に行なえるよう配慮願いたい。

    2. 奥田日経連会長
      1. 補正予算では、新社会資本への重点投資など限られた財源の有効活用を期待する。

      2. 会社分割関連税制、連結納税制度を、それぞれ平成13、14年度から導入されたい。外形標準課税の採用には賛成できない。自己啓発支援税制の創設が必要である。

      3. 確定拠出年金法案の早期成立を望む。企業年金の積立金に係る特別法人税の撤廃を要望する。次期通常国会に提出予定の企業年金法案には、特別法人税撤廃や厚生年金基金の代行部分の返上を盛り込む一方、強制的な支払保証制度は導入すべきでない。

    3. 水口同友会副代表幹事
      1. IT革命推進は民間主導を旨とすること、電子政府を実現することが重要である。そのため、規制改革の実行が求められるが、その過程ではさまざまな問題が生じる惧れがある。そこで、セーフティネットとしての社会保障制度改革と雇用対策に取り組む必要がある。財政構造改革の長期展望を示す必要もある。

      2. (1)FTAの推進、(2)企業関連法制の改革、株主代表訴訟制度の見直し、(3)企業組織再編税制の整備、連結納税制度の導入、有価証券譲渡益課税問題への配慮、(4)機能横断的な電子政府の実現、が必要である。

    4. 今井経団連会長
      1. 長期的観点から、税制、社会保障、地方財政等を包括した財政構造改革のグランドデザインとスケジュールを示す必要がある。

      2. 企業組織再編税制の早急な整備と確定拠出年金法案の早期成立が必要である。新たな規制改革推進計画の策定・充実と強力な推進体制が必要である。

      3. IT活用の環境整備にあたっては、民間主導、競争促進策が重要である。

      4. 産業競争力強化のため、戦略的・総合的な科学技術政策の策定・推進、産学官の連携強化が不可欠である。雇用システムの改革も重要な課題である。

      5. 企業再編法制の効果を高める上で緊急性の高い、ストック・オプション制度の整備等は次期通常国会で商法を改正願いたい。

      6. FTAを通商政策の重要な柱と位置づけ、積極的に推進いただきたい。

  3. 通産省側発言要旨
    1. 平沼大臣
      1. 景気下支えがなお必要である。IT関連、環境問題、高齢化対策、都市基盤整備に重点を置く。必要な公共事業は実施する。一方、赤字国債発行は抑えなければならない。国民の不安感払拭には中長期的な政策運営の方向性を明示する必要がある。

      2. 企業組織再編税制の整備、連結納税制度の導入に努力する。中小企業における円滑な事業承継のため、相続税体系の見直しを行ないたい。外形標準課税については極めて慎重に対処していきたい。

      3. IT、医療福祉、雇用、教育分野中心に新しい規制改革推進3か年計画を策定する。

      4. 時代のニーズに対応した商法の規律ある見直しは不可欠である。早期実現を求める意見を踏まえ、積極的に対応していく。

      5. WTOを通じた貿易自由化を補完する意味でFTAは避けて通れない。シンガポール以外の国からも提案が来ている。

    2. 坂本総括政務次官
      1. 確定拠出年金法案の早期成立の重要性は認識しており、積極的に働きかけていく。

      2. 大学の競争力向上、人材流動化など産業技術力強化、雇用システム改革に必要な施策を働きかけていく。

    3. 伊藤政務次官
    4. 一つの効率的な電子政府を早期に構築する必要がある。サイバー空間に係る規制改革と制度設計の早期実行が求められる。多様なネットワークインフラを提供すべく、回線敷設に係る透明なルールを策定する必要がある。独占の弊害を排除し公正競争を促進することが重要である。中小企業には、セミナー等を通じたITに係る知識・活用事例の紹介等の施策を講じる。

  4. 懇談要旨
  5. 懇談では、

    1. FTAの積極的推進、包括的なWTO新ラウンド交渉の早期実現、国内の通商関連規制の改革を求める発言、
    2. 事業承継税制の拡充、外形標準課税導入反対を重ねて訴える発言、
    があった。


くりっぷ No.134 目次日本語のホームページ