経団連くりっぷ No.134 (2000年10月26日)

経済政策委員会・財政制度委員会合同会合(経済政策委員長 櫻井孝頴氏、財政制度委員長 西室泰三氏)/10月13日

21世紀に向けた新たな成長戦略

−廣瀬通産事務次官よりきく


経済政策委員会ならびに財政制度委員会は合同会合を開催し、通産省の廣瀬勝貞事務次官より、21世紀に向けた新たな成長戦略について説明をきいた。

○ 廣瀬事務次官説明要旨

  1. 1990年代の日本経済を振り返ると、バブル崩壊に端を発する経済の低迷、金融危機・不良債権問題、設備・雇用・債務の「3つの過剰」などの諸問題を抱えるなかで、設備投資をはじめ企業活動が低迷した。また、財政赤字の拡大や少子高齢化などの構造問題によって、国民の将来不安が高まり、消費も低迷した。こうした民間部門の萎縮が更なる経済の低迷を招くという悪循環が生じている。こうした状況下で、小渕前政権は産業競争力会議を通じて、供給サイドの改革に着手するとともに、「3つの過剰」の整理にも取り組んだ。現在の森政権下でも、産業新生会議が企業法制などについて検討し、IT戦略会議・IT戦略本部が電子商取引推進や電子政府構築などの課題に着手している。しかし、依然として悪循環からの脱却には至っていない。

  2. 産業構造審議会の21世紀産業政策ビジョンにおいて示した日本経済の将来像は、「現状を放置すれば、2010年度以降の潜在成長率はマイナスに転じる」というものである。この場合、国民負担率が約6割に達し、財政赤字対GDP比は4倍超となる。経済審議会は実質2%成長を想定しているが、仮にこの成長率が実現されても、なお厳しい財政運営を迫られることになる。

  3. 現在生じている悪循環を断ち切り、好循環を生み出すためには、経済社会システムの変革に向けた総合的なグランドデザインの策定が不可欠となる。それによって、将来に対する国民の安心感が醸成され、民需主導経済への移行、持続的成長が可能なシステムの創出につながる。
    具体的には、まず経済構造改革に向けて、

    1. 事業活動基盤(商法などの経済法制、分割税制や連結納税制度などの税制、会計制度)の整備、
    2. IT革命による生産性向上、
    3. 競争政策ならびに民営化の推進、
    4. 規制緩和、
    5. 柔軟な労働市場の構築、
    6. 科学技術政策(産官学の連携による研究体制の整備)、
    などが必要となる。また、今後の成長制約要因とされる諸問題を克服し、成長要因に変えていくうえでは、少子高齢化をにらんだ新たな産業・市場の育成、エネルギー・環境問題に対応した経済社会システムの構築が重要である。さらに、持続可能な社会保障基盤の整備に向けた年金・医療改革や、経済全体の構造改革と併せて財政構造改革を推進することも不可欠である。

  4. 通産省も、来年1月の経済産業省への改組を機に、より幅広く経済問題を捉えていきたい。また、新設される経済財政諮問会議においても、役割を果たしていきたい。


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