経団連くりっぷ No.134 (2000年10月26日)

内海ITU(国際電気通信連合)事務総局長との懇談会(司会 内田事務総長)/9月14日

情報通信分野においても標準化戦略が重要


日本人として初めてITU(国際電気通信連合)事務総局長に就任した内海善雄氏から、ITUの活動を通じたわが国IT産業の推進について説明をきいた。

○ 内海事務総局長説明要旨

  1. ITUの活動について
  2. ITUは、189ヵ国が加盟する、電気通信に関する国際連合の専門機関であり、主として国際的な周波数の分配と調整、電気通信の標準化、開発途上国に対する技術援助を行なっている。

  3. 標準化戦略の重要性
  4. 日本のハイテク生産技術は世界最高水準であり、車やデジタルカメラなど競争が激しい産業においては日本で売れる商品は外国市場でも売れる。ところが、通信産業は規制産業であるため、各国に仕組みを合わせる必要があった。これを変え、国内で売れるものを外国でも通用させるのが標準化作業である。
    ファクシミリ市場は日本が席巻したが、この背景には、ITUが世界標準として採用したファクシミリ標準が日本で開発した方式という事情がある。世界がテレックスを使っていた時代に、日本は漢字を使うためファックスの将来性にかけて、ITUの標準化作業に熱心に参加し主導した。ノキアが、携帯電話市場を席巻したのも、第2世代携帯電話の標準化を制した欧州GSMが背景にある。欧米の通信機メーカーは標準化戦略を重視しており、ITUの標準化作業に関心をもっている。
    今年の前半、次世代携帯端末にどこの国の方式を採用するかが大きな論点となった。インターネット動画を流せ、コンピュータにもつながる次世代携帯端末にかける各国の戦略は凄まじく、とくに、欧州方式開発に携わったエリクソンと米国方式を開発したクアルコムは激しく争っていた。標準化の調整会議に私が出席することが決まると両社はすぐに説明に来た。米国は10数年前までは、自由を主張していたが、現在では標準化に注目している。わが国企業も標準化戦略に積極的に取り組むべきである。日本でつくった良い技術が世界の標準化になるという発想はもはや通じない。

  5. デジタルデバイドとビジネスチャンス
  6. ITUは、最近注目を集めているデジタルデバイドの解消についても積極的に取り組んでいる。日本企業にも協力して欲しい。欧米企業の場合、デジタルデバイドを開発途上国での市場拡大の機会ととらえて、ITUに対して人材開発の協力等の申し入れを行なっている。ITUの看板を借りて、開発途上国(中国、ブラジル、アラブ諸国、インド等)に参入しようとしている。わが国企業のビジネスチャンスに対する大胆な行動を望みたい。


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