経団連くりっぷ No.134 (2000年10月26日)

ポーゼン米国際経済研究所上級研究員とのセミナー(司会 渡邊特別顧問)/9月26日

米国の経済繁栄は続くのか

−米大統領選挙以降の米国経済の展望


経団連およびCBCCでは、来日中の米国の国際経済研究所のアダム・ポーゼン上級研究員を招き、民主党、共和党各党の政策比較および米国経済の見通しならびに日本経済への影響等に関してのセミナーを開催した。

○ ポーゼン上級研究員説明要旨

  1. 米国経済の現状
  2. 米国経済は、クリントン政権の下、著しい回復を遂げた。現在、好景気であり、今後も更なる成長が期待されており、少なくとも3.5%の堅調な増加を維持していくことになるだろう。懸念されていたインフレもなく、雇用が創出される等ファンダメンタルズも大変良好である。1970年代半ばから不可能と思われたような経済好況を実現化することに成功した。特に本年上四半期はかなり高い経済成長を達成するとともに、生産性の向上もみられた。また、外的要因として好材料が多く、特に日本および欧州からの資本(投資)が引き続き米国市場に流れ込んできており、さらに米国経済を取り巻く環境は良くなってきている。
    しかし、米国の著名な経済学者および政府経済政策担当者はこの好景気の理由を説明できないでいる。これが米国経済をめぐるミステリーといわれる所以である。

  3. 米国経済の問題点
  4. いつ米国のバブル経済が崩壊するのかという質問を多く耳にする。現象面ではバブル経済特有の兆候はあるものの日本型のバブルとは異なったものである。米国では金融機関から土地を担保にローンを借りることは少ない。また、不動産価格も安定化しており株価との連動性もない。さらに、銀行が非金融系企業の株式を所有することは最近まで法律上禁止されていたため、株価の下落による金融不安という状況が制度面から抑止されることになっている。したがって、仮にバブルが破裂したとしても危険な状況にはならない。

  5. 民主、共和党の新政権について
  6. ジョージ W.ブッシュ候補(テキサス州知事)のマクロ経済政策はレーガン政権の経済政策を基本に世襲するものである。これは抜本的な減税措置と連銀の金融政策とのチェック・バランスをとっていく政策を意味する。外交政策もより広範囲に政策展開を行い、自由貿易を積極的に推進していくものである。
    一方、アルバート・ゴア候補(副大統領)のマクロ経済政策はクリントン政権で推進されてきたロバート・ルービン、ラリー・サーマーズ両財務長官のラインを継承するものである。税制、財政政策もほとんど変わりばえのしないものである。しかし、ゴア候補はトータルでは現政権を世襲することになるので「責任」と「繁栄」を米国民に約束することができる強みがある。日米関係については両政権とも日本のアジアでの役割を再評価しており、現在、喫緊の対日要求アジェンダもない。


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