経団連くりっぷ No.135 (2000年11月9日)

中華人民共和国 朱鎔基国務院総理歓迎昼食会(経済6団体主催)/10月14日

西部大開発、北京−上海高速鉄道等について朱鎔基総理と意見交換


朱鎔基総理

経団連、日商、日経連、経済同友会、日本貿易会、日中経済協会の経済6団体は、公賓として来日した中国の朱鎔基国務院総理の歓迎昼食会を開催した。会合には、経済界から約170名が出席し、今井会長の挨拶、朱鎔基総理のスピーチの後、意見交換を行なった。

  1. 今井会長挨拶要旨
    1. WTO加盟は、中国経済がグローバル化する過程で一つの重要な通過点である。グローバル化にはさまざまな痛みが伴うが、構造改革に努めて競争力を維持・強化してきた日本の経験が中国の役に立てば幸いである。

    2. 中国が今後一層の経済発展を遂げるためには、外国直接投資を積極的に受け入れることが必要である。こうした観点から中国政府には、投資環境の一層の改善をお願いしたい。また、日系保険会社の進出認可や、北京以外の主要都市における外国人商工クラブの認可なども検討してもらいたい。

    3. 西部大開発は、環境を保全しながら中国中西部の開発を進めようとする壮大な試みであり、長期的・持続的な取組みが重要である。インフラ整備には膨大な資金を要するだろうが、日本の経済界としていかなる協力が可能か検討していきたい。環境保全に資するため、経団連でも中国での植林事業に取り組んでおり、来年春には重慶で実際に植林を行なう予定である。

    4. 北京−上海間の高速鉄道については、技術面、経済面とも日本の新幹線システムが最適であると考える。中国が日本の新幹線を採用し、21世紀はじめの中国の経済発展のシンボルとするとともに日中協力のモニュメントにすることを希望している。

    5. 昨年11月のマニラでのASEAN+3首脳会議を契機に、東アジアでの地域協力強化の気運が高まっているが、長期的には北東アジアも視野に入れつつこの地域での協力の可能性を探る必要がある。

  2. 朱鎔基総理挨拶要旨
    1. 1998年に江沢民国家主席が来日した際、中日両国は平和と発展のための友好協力パートナーシップの枠組みを確立し、両国関係の発展の方向を示した。中国政府は、両国が理解と信頼を一層深め、友好協力関係を強めるよう努力する。対日関係は中国の最も重要な対外関係の一つであり、中日両国の交流は信頼を基本とすべきである。両国が互いに信頼し協力することは、両国にとって利益であるだけでなく、アジアや世界の平和と発展にも大きな影響を与える。

    2. 先日閉幕した中国共産党第15期中央委員会第5回総会(5中全会)で、来年から実施される第10次5ヵ年計画の建議が採択された。ここでは、今後5〜10年の中国の経済成長率を年平均7%前後と見込んでいる。経済構造を戦略的に調整し、情報技術を核にハイテク産業の発展を加速させる。また、西部大開発を実施して重要なインフラ建設プロジェクトを着工させ、環境保全と外資導入に力を入れる。さらに、国有企業改革においてはさまざまな種類の株式制をとり、市場の整備にも重点を置く。財政政策については、今後数年は積極策を継続する。

    3. 対外開放も一層進める。中国は現在、WTO加盟に向けて法令の制定や改正などの準備を行なっている。WTO加盟後、中国は商品やサービス貿易の開放を徐々に拡大し、投資環境の改善に積極的に努める。

    4. 西部地域の開発は中国経済の持続的発展のために必要であり、西部大開発は第10次5ヵ年計画において重点的な特別企画プロジェクトと位置づけている。5〜10年以内に西部のインフラ建設と生態環境建設を大きく進展させ、同地域を経済成長の新たなフロンティアにするつもりである。すでに20の西部開発促進政策を発表しており、それには外国企業による投資分野の拡大や経済技術交流の拡大なども盛り込んでいる。

    5. 中日両国の協力拡大に向けて、中国は3つの分野で日本に対し協力の強化を呼びかけたい。第1は西部大開発への協力拡大である。西部大開発への日本の支持と参画は、21世紀の中日経済協力に大きな空間を提供するだろう。砂漠化の防止等を含む生態環境の整備・改善は最重点項目の一つであり、環境保全に関する日本の技術や経験を西部地区の開発に生かしてくれることを望んでいる。

    6. 第2は、技術および投資協力の深化である。両国は基礎研究とハイテクにおける協力を強化して、科学技術分野での人材交流を拡大すべきである。金融協力も強化して、金融リスクをともに防止すべきである。

    7. 第3は、東アジアにおける新たな地域経済協力の分野を開拓することである。アセアンと中国、日本、韓国による協力のメカニズムが始動しており、初歩的な成果をあげている。中国は、東アジアでの地域協力に対する日本の影響と役割を重視している。中国は日本との協調を強化しながら、東アジアでの地域協力の進展に貢献したいと考えている。

  3. 意見交換(要旨)
  4. 日本側:
    東京オリンピックが開催された1964年に開業した日本の新幹線は、東京、大阪、名古屋という三大都市を経済的に一体化させ、その後の日本の経済成長に大きく貢献した。北京・上海高速鉄道の建設により両都市間の経済が一体化すれば、中国に巨大な経済効果がもたらされる。将来、西部の主要都市にも延長されれば、西部大開発にも大きく貢献できる。北京・上海高速鉄道に関して、日本側は車両や機器はもとより建設や運営管理を含めたシステム全体の技術移転について全面的に協力していく所存である。中国政府としては、いつ頃までに結論を出そうと考えているか。

    朱鎔基総理:
    高速鉄道の建設自体は来年から始まる第10次5ヵ年計画の中でも確定しているが、どういった路線をとるか、どのような技術を用いるか(リニア方式か新幹線方式か)、そしてどの国をパートナーにするかについてはまだ決まっておらず、慎重に検討したい。私の希望としては、第10次5ヵ年計画のうちに、できれば私の任期内に決定したい。

くりっぷ No.135 目次日本語のホームページ