経団連くりっぷ No.135 (2000年11月9日)

評議員懇談会(座長 那須 翔 評議員会議長)/10月20日

経済団体・業界団体の役割ならびに教育改革の推進について懇談


評議員約80名の出席を得て、評議員懇談会を開催した。当日は、那須評議員会議長、今井会長から挨拶があった後、第1分科会「経済団体・業界団体の役割」(座長:橋本評議員会副議長)、第2分科会「教育改革の推進」(座長:北岡事業委員長)に分かれて懇談した。

  1. 全体会議
    1. 那須議長挨拶
      1. 景気を民需主導の回復軌道に乗せるため、法制・税制面の改革、規制改革の推進、情報技術の利用環境整備など企業の活力が最大限に発揮される環境を整備しなければならない。一方、経済団体や業界団体は、そのありようを見直し、21世紀に求められる新たな役割に応えていく必要がある。

      2. 将来に対する国民の不安感は依然払拭されていない。経団連が示した経済・財政等のグランドデザインのたたき台を基に将来を見据えた建設的な議論が行なわれることを期待する。

      3. 次代を担う人材を育成するための仕組みづくりは最重要課題の一つである。国の屋台骨にかかる根本的な問題であり、広い視野を持って取り組む必要がある。

    2. 今井会長挨拶
      1. 民間設備投資は伸びが見込まれるが、消費の先行きが不透明であり、民需主導の自律的な景気回復を確実にするには、今暫く財政金融面の下支えが必要である。「日本新生のための新発展政策」と併せて、補正予算の早期成立が必要である。また、超緩和の金融政策を当分維持する必要がある。

      2. 個人消費が盛り上がらない原因の一つである国民の将来に対する不安を払拭し、安心して暮らせる経済社会を構築するには、税制、社会保障、地方財政等を含む包括的な財政構造改革のグランドデザインを早急に策定する必要がある。経団連のシミュレーションでは、制度改革が不可欠という結論が浮かび上がってくる。痛みを伴うとしても、必要な改革は先送りできない。

      3. 簡素で効率的な政府を実現するには、行政改革、規制改革が非常に重要である。中央省庁の再編に止まらず、特殊法人等の改革、地方の改革にも取り組む必要がある。規制改革については、来年度を初年度とする新たなアクション・プログラムの策定と推進体制の整備が不可欠である。

      4. 産業新生のための第1の課題は、IT革命の推進である。IT基本法を臨時国会で早期成立させるとともに、IT国家戦略を年内に策定しなければならない。IT革命の主体はあくまで民間であり、政府の役割は自由で公正な競争を促進するための環境整備に限定される。第2は、法制・税制面の環境整備である。会社分割法制に即した税制の整備、2002年度からの連結納税制度の確実な導入、株主代表訴訟の見直しを含む商法の抜本改正等は喫緊の課題である。第3は、産業技術力の強化である。戦略的・総合的な科学技術政策の策定・推進、産学官の連携強化等が必要である。

      5. WTOによる多角的自由化と並んで二国間の自由貿易協定を通商政策の重要な柱と位置づけ、各国との協定締結を働きかけている。また、各国との関係緊密化の一環として、最近では、米国経済界首脳と米国経済の現状と見通しや自由貿易協定の可能性等について懇談したほか、来日したロシアのプーチン大統領には、日本企業がロシアで直面している問題を率直に指摘した。変わりゆくロシアを是非見てほしいとの要請には、団を編成して訪問する旨応じた。同じく来日した中国の朱鎔基総理には、貿易・投資環境の改善を求める一方、西部大開発への協力のあり方を検討する旨伝えた。

  2. 分科会
    1. 第1分科会
      1. 内田事務総長説明要旨

        1. 日経連との統合に関する経緯と検討の進捗状況、
        2. 戦前から戦後にかけての経済団体の変遷、
        3. 経済団体・業界団体を取り巻く環境の変化、
        4. 公益法人行政の動向、
        について説明。

      2. 懇談要旨

        1. 規制緩和の進展、企業間競争の激化、製品・業種の融合などの環境変化に伴い、業界団体の組織・機能面の見直しが求められている旨の発言があり、統合を決定した業界団体の事例も紹介された。

        2. 今後については、会員企業の負担軽減に配慮しつつ、
          1. 調査研究・情報提供機能の強化、情報の電子的提供、
          2. 商品知識の提供や苦情処理・相談受付など消費者への適切な対応、
          3. 各国制度の動向等に関する情報交換や製品の基準に関するハーモナイゼーション等の国際的な活動、
          などに注力していく旨発言があった。加えて、わが国の公益活動を推進するうえで業界団体が果たしている公益的な役割を積極的に評価すべきである旨の意見があった。

    2. 第2分科会
      1. 浜田人材育成委員長説明要旨

        1. 経団連の取組み(産業界が必要とする人材の育成に関する提言、社会的道徳的側面に関する経営トップレベルでの議論等)、
        2. 総理の私的諮問機関「教育改革国民会議」の中間報告、
        3. 同中間報告の提案に関する人材育成委員会の検討状況、
        について説明。

      2. 懇談要旨

        1. 学校教育に関する意見:
          1. 人格形成のための教育と創造力を育成するための教育とを分けて検討する必要がある。
          2. 義務教育と選択的教育の線引きを見直すべきである。
          3. 優れた人材が教員として働きたくなるように処遇を改善すべきである。
          4. 学力低下を回避するために「ゆとり教育」を見直すべきである。
          5. 学校に自由度を与え、創意工夫ができるようにすべきである。
          6. 私学がユニークな教育を行なえるような環境を整備すべきである。
          7. 日本人の宗教観を見つめる必要がある。

        2. 家庭教育に関する意見:
          1. 「親は本来あるべき親の姿を取り戻そう」というキャンペーンを盛大に起こすべきである。
          2. 企業としても、家庭の重要性に対する認識を社員に浸透させる必要がある。

        3. その他:
          1. 地方の独自性を保つために、各地で教育県民会議を開催し、中央と地方の間に緩やかなネットワークを構築すべきである。
          2. 国に頼るだけではなく、産業界も財政的支援を含めて学校運営に積極的に関与すべきである。


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