経団連くりっぷ No.135 (2000年11月9日)

新入会員代表者との懇談会(司会 内田事務総長)/10月23日

新入会員代表者より当会に対する率直な意見・要望をきく


経団連では、新しく入会した会員の代表者から、各企業・業界の当面する課題や要望等をきき、活動に反映させている。当日は新入会員代表者9名および今井会長、内田事務総長ほか事務局役員5名が出席し、率直な意見交換を行なった。

○ 新入会員代表者発言要旨

  1. 富士通総研 佐藤至弘 社長
  2. 当社は1995年4月に1ドルが80円を割った際、将来の方向性を見出すべく富士通自前の経済研究所を付設した。
    日本とアジアの経済社会における中長期的課題に視点をおいて活動している。提言内容は玉虫色化を極力避け、明確な主張を旨としている。経済界はもとより各界との交流を通して有益な政策実現に努めており、経団連、21世紀政策研究所とも連携をとりながら今後も精力的に活動していきたい。

  3. TOWA 奥田貞人 社長
  4. 半導体製造の後工程に要する機械設備、超精密金型などを製造している。
    本社のある京都はインフラが整っており技術伝承の素地がある。京都企業は、国内に市場のない事業を興しグローバル展開していくという共通点があるが、当社も海外数カ所に生産拠点を持っている。
    IT革命はインターネットの普及やコンテンツの充実が強調されているが、ハードの進展も不可欠である。当社は超精密技術を駆使し、小さく薄く軽いものを先進的に造ることで社会に貢献していきたい。

  5. エニックス 福嶋康博 会長
  6. 当社は自らが事業を考え行動することを旨としている。主事業のゲームソフトも出版事業も全くの素人から出発し成長させた。
    業界最大の問題は、インターネットを悪用したソフトの無料配信、不正使用で、業界あげて法規制の必要性を訴えている。
    ストックオプション税制の改正が必要だ。得た利益のほとんどが税金である場合がある。
    広帯域光ファイバー網は全ての人々に画期的な利便性を提供できる。全業種についての有効な用途を考え、それを一度に発表すれば事業者および家庭が一気にマルチメディア時代に突入する。全業種の用途を考える必要がある。

  7. 全国測量設計業協会連合会(略称:全測連) 鈴木俊之 会長
  8. 全測連は47都道府県別に設けられている社団法人である測量設計業協会の連合体である。
    全測連およびいくつかの県協会は、公益法人設置基準をクリアしているが、その他の大多数の協会は、引続き公益法人として残るか、それとも中間法人に移行するかの対応を迫られている。
    省庁再編で建設省が国土交通省となる。地方分権の動きもあいまって、今後、どのような影響が出るか心配である。
    地籍調査事業では迅速化が求められているが、関係団体間の意思疎通が十分でなく、事業推進上支障をきたしている。国民的な見地で当該事業を積極的に推進するための体制づくりと当該事業の重要性を国民各層に提言していきたいと考えているので、経団連も支援を願いたい。

  9. 日立投資顧問 丸田 宏 社長
  10. 当社は日立グループの年金資産運用の専門会社である。企業年金財政が企業の国際競争力を左右する中、利回りの僅かな差が連結経営に大きく影響を与える。
    日本経済は回復基調にあるが、株価は低迷し、年金資産の運用状況は厳しい。海外投資家は、改革のスピードと政治の信頼性に疑問符をつけている。例えば確定拠出年金法案もなかなか成立しないのが現状である。これでは海外投資家の信頼は得られない。

  11. マイクロソフト 阿多親市 社長
  12. マイクロソフトは100%子会社を60ヵ国で展開している。アジアにおける統括会社はシンガポールにあるが、日本に統括機能を置く場合と比べ、各種の優遇措置がとられ、地理的にも有利である。グローバル企業を日本に引き付ける為の諸政策が必要である。
    インターネットは未だカタログの展示場にすぎず実際のシステムと繋がっていない。個人認証の問題が重要で、早期に住民票などをネット上でやりとり可能とすべきだ。
    IT時代にマッチした教育改革も重要で、アジア諸国に遅れをとっている。早期の英語教育や最新機によるパソコン教育を行えば、数年後の日本経済に大きく寄与する。

  13. 廣済堂 山崎康久 取締役相談役
  14. 廣済堂は印刷を中心に11社でグループを形成し複合的に事業を展開している。一般的に印刷は低調であるが、マルチメディア関連、就職情報誌、斎場経営は好調である。世界23ヵ所にあるゴルフ場も不況下では健闘している。
    敦煌のデジタル化に取組みたい。館内所有の文化財と異なり、外気に晒され劣化が著しい。中国は日本文化の源流であり敦煌も関係が深い。中国市場への取組みとあわせて、文化面の支援もお願いしたい。

  15. 雪国まいたけ 大平喜信 社長
  16. 舞茸の生産を手がけており、売上の9割以上はその関連商品が占めている。
    きのこ栽培は企業化が難しいと言われてきたが、大胆な経営手法により業績は順調に推移し、社会的認知度も大幅に向上した。
    ストックオプション制度の改善を望む。現行の制度は子会社の役員には適用できず、連結経営時代にマッチしていない。
    生活レベルの向上に伴い、欲の無い保守的な人間が増えている。レベルの高い自己実現欲求を持った国民を育てる方策を講じないと、日本経済の将来に暗い影をおとす。
    納税に対する意識改革が必要だ。多額の納税は悪行の代償だという見方がある。納税は国への貢献との認識が広がれば、企業経営にとっても多いにプラスとなる。

  17. 山一興産 柳内光子 社長
  18. 経団連は堅いかつ怖いイメージが先行しており、女性の代表者が3名しかいない。女性経営者の参加を望みたい。
    生コン・セメント関連製品の販売を行なっている。インフラ整備に必要不可欠な事業という誇りをもって仕事をしている。
    社会貢献の一環として、特別養護老人ホームも関東近県で展開している。
    中国などへの海外展開を進めているが、ODA戦略の再構築が必要ではないか。インフラ整備等に多額の日本資金が利用されているが、現地市民には全く理解されていない。内容面も含めた改革の進展を望む。


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