経団連くりっぷ No.135 (2000年11月9日)

アメリカ委員会 企画部会(部会長 本田敬吉氏)/10月17日

日本の競争戦略−米国から何を学ぶのか

−一橋大学大学院 竹内国際企業戦略研究科長よりきく


アメリカ委員会 企画部会では、竹内弘高一橋大学大学院国際企業戦略研究科長から、日本の競争力の問題点、米国企業の競争力強化の施策に関しての説明をきいた。

○ 竹内弘高教授説明要旨

  1. 日米逆転の20年
  2. 1980年代の前半、日本企業はその品質管理および効率性の高さOE(Operational Effectiveness)で世界の企業のリーダー的存在であった。日本企業のOEに啓発され、GEウェルチ会長の「ベスト・プラクティス」、モトローラ社フィッシャー会長の「シックス・シグマ」、ヒューレットパカードのヤング社長の「HOUSHIN(方針)」等の改革プログラムが作成・実施された。1990年代に入り、日本型OEに勝つために米国企業は次の手段であるITを採り入れた。その結果、IT導入により米国企業のOEは飛躍的に進歩した。「品質を上げる」「時間を短縮する」「コストを下げる」等、IT導入がなければ達成できない状況になっている。しかし、ここで重要なことは「ITはOEをベターなものにする」ということで、ITはそのツールにすぎないことを認識しなくてはならない。

  3. 経営戦略のあるべき姿
  4. これからの経営で重要なことは「Not to do(やらないことを選ぶ)」ということ、そして「Be different(異なることする)」ということにある。すなわち他社と異なった企業戦略(SP=Strategic Positioning)を明確にすることである。インテル社は1998年に自ら開発したD-RAM部門をあっさりと切り捨てマイクロ・プロセッサーに特化したのが良い例である。米企業は「われわれは何をやらないか」という点を明確化している。
    一方、日本企業は「総合」「何でも屋」が多い。全てをやることは「戦略」とはいわない。これまでの日本企業は売り上げ重視で総合的に全ての競合分野を手がけてきたが、これでは利益が出ない。日本企業でいう「健全な赤字部門」などというものが存在すること自体おかしいのである。これからは収益性を徹底的に追求する経営が求められる。

  5. 「Be Different」の成功例
  6. ここで成功している航空会社のケースを紹介したい。ヒューストンに本部を置くサウス・ウエスト航空は最も差別化しづらい航空業界にあり、競争が激しく、しかも中小企業ながら31年間連続黒字の珍しい会社である。サウス・ウエスト航空では短距離(1時間以内)フライトのみに特化し、空のバスという感じで、座席指定なし、ファースト・クラスなし、食事なし、荷物の他航空へのトランスファーもなしのないずくめだが、客層を絞って大成功している。
    このように効率性と収益性を追求するとともに他社と異なったことをすることが経営者に求められている。


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