経団連くりっぷ No.135 (2000年11月9日)

農政問題委員会 森林部会(部会長 山口博人氏)/10月16日

情勢変化に対応した新たな林政の枠組み

−林野庁林政部高橋企画課長よりきく


現在、林野庁では、林業基本法、森林法等の関連法の見直しも視野に入れた、新たな森林・林業・木材産業の改革に向けた検討を進めており、今般、林政審議会において、今後の林政の方向性を示した報告書をとりまとめた。そこで当部会では、林野庁林政部の高橋賢二企画課長を招き、説明をきいた。

○ 高橋課長説明要旨

  1. 森林・林業・木材産業を巡る情勢の変化
  2. 従来の林政は、旺盛な木材需要を背景として、林業総生産の増大を目標に施策を実施してきており、森林の公益的機能は副次的に発揮されるものと認識されていた。
    しかし、近年、森林に対する国民の要請は、国土保全、水資源の涵養等のほか、保健・文化・教育的利用、地球温暖化防止等多様化している。また、品質、性能等の対応の遅れにより国産材のシェアが低下するとともに、林業の採算性の悪化、不在者所有森林の増大等により、適正な管理が行なわれない森林が増加するおそれがある。

  3. 情勢変化を踏まえた新たな林政の確立
  4. 今後、政策の主眼を木材生産から、森林の多様な機能を持続的に発揮できる森林整備を目指すものへと移していく。林業経営については、従来の森林所有者を中心とした対応から、林業意欲を有する者が、森林所有者からの受委託により森林の管理や経営を担うような形態への転換を図る。

  5. 数値目標の設定
  6. 木材自給率の設定については、新たな林政の指針として必ずしも適当とはいえないが、関係者の今後の取組みの指針として、森林の適切な管理の観点から、何らかの数値目標を設定すべく検討を進める。

  7. 森林の適切な管理の推進
  8. 森林の多様な機能の持続的な発揮等の観点から森林計画制度を見直し、最も重視すべき機能に応じて森林をゾーニングし、ゾーンごとに適切な整備を推進する。また、従来の皆伐、新植を主体とする画一的な施業を見直し、多様な施業を導入する。
    新基本法では、森林所有者の適正な管理責務を明確にするとともに、公益上の支障が生ずる場合に対応した勧告・是正措置等を充実、強化する。
    社会的コスト負担のあり方については、環境税や自治体の法定外目的税に関する検討状況等も踏まえつつ、今後研究を進める。

  9. 林業・木材産業の振興
  10. 森林組合については地域における森林管理の主体として位置付けると同時に、組織の合理化、透明化をはかる。
    木材産業については、乾燥材の供給体制の早期整備、高次加工化等を推進するとともに、加工・流通の再編整備を推進する。また、国産材利用促進のため、住宅分野や公共部門等における地域材利用を強力に推進するとともに、バイオマスエネルギー源等としての利用の多角化をはかる。


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