経団連くりっぷ No.135 (2000年11月9日)

WTOサービス自由化交渉に関する懇談会(座長 太田参与)/10月13日

議論が進むWTOサービス貿易自由化交渉

−外務省 高瀬サービス貿易室長よりきく


外務省の高瀬寧サービス貿易室長から、10月上旬にジュネーブにて開催されたWTOサービス貿易理事会特別会合ならびに関連組織会合の模様についてきいた。

○ 高瀬室長説明要旨

  1. 交渉ガイドラインを議論
  2. WTOサービス貿易協定19条は、サービス交渉に際しての指針・手続に関するガイドラインを作成するよう定めており、現在その作業が行なわれている。

    1. 交渉方式:
      サービス交渉の進め方については、リクエスト・オファー方式(国別分野別に自由化要望項目を各国が出し合い交渉する方式)を基本としつつ、クラスター、フォーミュラ等の他の方式で適宜補完していくという点でおおむね意見が一致している。しかし、リクエスト・オファー以外の方式を具体的にどのセクターで取り上げていくかについては今後議論が必要であろう。

    2. 交渉の出発点:
      現行の約束表を、自由化交渉のスタートラインとすべきであるという立場が多い。これに対して、米国のように交渉の出発点を各国の現行の制度とし、交渉を通じて現状以上の自由化を目指すべきであるとの立場もあり、調整が必要である。

    3. 交渉期限:
      サービス交渉の期限については、2002年末(米国提案)、2003年末またはラウンド交渉の終了時のいずれか遅い方(香港提案)などがあるが、期限を明示することに反対の国も多い。わが国は包括的ラウンドの必要性を主張しており、サービス交渉のみについて交渉期限を定めることには反対の立場である。

  3. 各国の交渉提案の動向
  4. 5月に採択された交渉のロードマップにしたがって、本年12月末までに各国が交渉に関する提案を行なうことになっている。この関係で、インド、パキスタン等は人の自由移動に関するリクエストを提出する予定である。EUは11のサービス分野について、分野毎の主なリクエストを盛込む見込みである。
    米国も10前後の分野でのリクエストを盛込むものと思われる。なお、米国は、エネルギー分野に関して「参照ペーパー」を提案してくる可能性がある半面、その他の分野では一般的記述にとどめるなど、分野によって対応が違うものと思われる。わが国も、現在交渉提案の提出に向けた作業を行なっている。

  5. 国内規制の必要性をめぐる議論
  6. 国内規制については、過度な規制がサービス貿易の障害とならないよう、国内規制の「正当な政策目的」について一応の目安となる、網羅的でない例示リストを作成してはどうかとの議論がある。しかし、例示リストが作成されると、リストに例示されていない国内規制が紛争処理機関に持ち込まれ、サービス貿易をめぐる紛争が過度に司法化されるおそれが指摘されており、更なる議論が必要である。


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