経団連くりっぷ No.136 (2000年11月22日)

第27回北陸地方経済懇談会/11月9日

21世紀に向けた経済新生と北陸地域の発展を目指して

−北経連と懇談


「21世紀に向けた経済新生と北陸地域の発展を目指して」をテーマに、経団連・北陸経済連合会(北経連)共催の標記懇談会が福井市にて開催された。当日は今井会長、前田・岸・荒木・片田・槙原・香西の各副会長が出席し、約100名の参加の下、活発な意見交換が行われた。また、懇談会に先立ち、セーレン株式会社を訪問し、地場産業である繊維の最先端染色技術による企画・製造・販売一貫システムなどを視察した。

  1. 北経連側発言要旨
    1. 開会挨拶
      〔山田 圭藏会長/北陸電力会長〕
    2. 北陸地域は豊かな自然、歴史、文化に恵まれ、特色ある産業・技術が集積するとともに、北東アジアや東京・大阪・名古屋の三大都市との近接性にも優れる。北経連では、環日本海交流のゲートウェイとしての機能に重点を置き、社会資本整備の促進を喫緊の課題としている。とりわけ永年の悲願である北陸新幹線については、長野から南越までの区間をフル規格により、10年程度で完成させるべく、現在働きかけている。
      また、魅力ある地域づくりを目指し、地域産業の活性化、広域観光、環日本海経済交流の推進に取り組んでいる。例えば、「北陸は一つ」の理念のもと、予てから提唱していた「北陸スーパー・テクノ・コンソーシアム(北陸STC)」を年内にも立ち上げる予定である。また、「北陸環日本海経済交流促進協議会(北陸AJEC)」(1992年設置)のもと、北東アジアにおける産業・学術・人材等の交流推進に取り組んでいる。

    3. 北陸経済の現状と課題
      〔八嶋 健三副会長/北陸銀行会長〕
    4. 北陸地域の景気の現状については、生産活動に持ち直しの動きが見られ、企業の景況感も上向きつつあるが、景気回復を実感するには至っていない。ただ、個人消費ではコンビニなどの売上が順調で緩やかな回復傾向もみられる。また、設備投資は4年ぶりに前年を上回り、工業生産も増加している。
      北経連会員企業へのアンケートによれば、景気上昇の時期は「平成13年度後半」と答える企業が約8割を占めている。また、必要な経済対策として、規制緩和の推進、企業課税の引下げなどの要望が強い。企業税制については連結納税制度の早期導入等が必要であると考えるが、外形標準課税の導入に対しては慎重にならざるを得ない。
      今後、北陸経済の自立回復のためにも、「日本新生のための新発展政策」の確実な推進、第2次補正予算、来年度予算編成など、政府の機動的な政策運営に期待したい。

    5. 産業経済活性化のための取組み
      〔江守 幹男常任理事/日華化学社長〕
    6. 北陸で新技術を創出していくためには、北陸三県の産官学が連携し、企業や個人からアイデアを収集し、強力なネットワークの中で専門家による評価、共同研究の場を提供し、実用化を狙うシステムである北陸STC構想の実現が必要不可欠である。
      また、北経連では、観光を地域の重要産業として一層発展させるため、広域観光振興のプランづくりに着手し、顧客本位、人材育成等を基本方針として、三県一体の観光振興策を検討している。平成14年のNHK大河ドラマに決定した「利家とまつ」(加賀百万石物語)を起爆剤として、北陸の新たな魅力を全国で再発見してもらいたい。
      さらに、IT革命が押し寄せる中、高度情報通信基盤の整備はますます重要である。北経連では、行政や通信・放送事業者等の取組みを調査し、情報基盤の今後の活用に向け提言している。現在は、次世代情報ネットワークなどの活用につき検討している。

    7. 環日本海経済交流の推進
      〔市橋 保副会長/福井銀行相談役〕
    8. 環日本海交流のフロントランナーとして位置付けられる北陸地域は、対岸諸国との交流基盤整備を通じて環日本海のゲートウェイとしての機能を果たすことが重要である。北経連では北陸AJECのもと、対岸諸国との経済交流を促進している。
      今年度は特に韓国との交流強化を目指しており、本年7月開催の「第1回北陸・韓国経済交流会議」では、(1)パートナーシップの構築、(2)産業技術協力、(3)国際物流に関する調査研究、について交流事業を進めることで合意した。来年2月には韓国で第2回会議が開催予定であり、北経連としても、北陸投資環境説明会等を通じて環日本海交流の活発化に努める所存である。
      また、北陸が環日本海交流の拠点を目指す上からは、人材育成も重要課題の一つである。北陸在住留学生を対象に行ったアンケートによると、母国と日本との間の経済交流、技術協力、人的交流等が重要視されており、今後、環日本海交流を支える有力な人的資源として、留学生に期待したい。

    9. 社会基盤の整備促進
      〔宮 太郎副会長/大和相談役〕
    10. 整備新幹線の建設促進に関して、一昨年の懇談会で、政府に対する共同の働きかけを経団連に要望したところ、快諾して陳情に取り組んでいただき感謝している。北陸新幹線については遅々として進んでいないのが現状であるが、今年が正念場と考えており、整備促進に向けた共同行動など、経団連には今年も格別の協力をお願いしたい。

    11. フロア発言
      〔黒川 誠一常任理事/セーレン相談役〕
    12. 21世紀の日本新生に当たっては、長期戦略に基づいた抜本的な改革が不可欠であるが、今日のわが国の政治・経済・社会状況をみると、改革に反対する意見も散見される。戦術的な問題にのみ拘泥するのではなく、戦略的な考え方を打ち立てて改革に取り組んでいくべく、経団連にも各界への啓蒙をお願いしたい。

  2. 経団連会長・副会長発言
  3. 前田副会長より産業新生会議と税制改正提言、片田副会長より今後の会社法制の課題、また岸副会長より情報通信市場の活性化に向けた取組みについて発言がなされた。さらに、荒木副会長がエネルギーをめぐる最近の動向、槙原副会長が貿易・投資をめぐる課題と北東アジアとの経済交流について発言した後、香西副会長より魅力ある北陸の地域づくりについて説明があった。
    最後に今井会長より、北陸におけるさまざまな取組みを踏まえつつ、経団連として経済新生に向け積極的に取り組んでいくとの総括があった。


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