経団連くりっぷ No.136 (2000年11月22日)

グローバル化時代における企業行動に関する説明会(司会 和田専務理事)/11月8日

企業行動のあり方をめぐる最近の国際的議論


企業行動委員会では、企業行動・企業倫理に関する国際会議であるコー円卓会議(CRT: The Caux Round Table)の年次会合に参加した小笠原敏晶ニフコ社長(国際MRA日本協会CRT部会長)、金子尚志NEC相談役(同副部会長)他から、企業行動のあり方をめぐる最近の国際的議論の論点等について説明をきいた。

  1. CRTの取組みと今後の企業行動の課題
    〔小笠原ニフコ社長〕
  2. CRTは、世界の企業に普遍的に通用する基準として1994年に「企業の行動指針」をとりまとめ、各国への普及を働きかけている。例年、スイスレマン湖近くのコーで年次会合を開いているが、本年9月には初めて欧州を離れ、シンガポールで会合を開催した。会議では最近の日本企業の不祥事も話題にのぼったが、企業の危機管理のあり方については欧米企業に学ぶべき点は依然多い。
    今後の企業行動のあり方として、

    1. 人権、労働、環境等の分野での企業行動に関する世界的潮流の理解、
    2. 倫理担当役員の任命など社内体制強化とグループ企業への周知徹底、
    3. 経営トップの明確な姿勢の打ち出し、
    の3点が重要である。

  3. 企業倫理の重要性とCRTの役割
    〔金子NEC相談役〕
  4. 経済が複雑化する中で企業不祥事を防ぐためには、企業行動規範の作成と周知徹底、トップの強い意志と社員の順法精神の涵養、企業倫理担当組織の設立等が不可欠である。NECでも企業行動憲章や行動規範、各種社内規定等の制定、総員100名以上からなる組織体制の整備を図っている。
    CRTの企業行動指針は、経団連企業行動憲章作成の参考となるなど、先駆的な役割を果たしてきた。今後とも日本での普及に努力したい。

  5. CRT活動の特色
    〔金子保久国際科学技術財団事務局長/CRT部会幹事〕
  6. CRTの指針は「べからず集」でなくこういう行動をしようというアクションを伴う所が特色である。21世紀の日本では、企業のみならず、社会、医療、科学等あらゆる分野で「倫理」がキーワードとなる。企業が21世紀に相応しい行動をしていくため、ゼロから組織を見直す必要がある。

  7. TSIファンド(Total Social Impact Fund)の動向
    〔稲岡稔イトーヨーカ堂取締役/CRT部会主幹事〕
  8. TSIファンドはCRTの指針を基準にして各企業を評価したインデックスおよび投資信託である。米国ではS&P500社を対象に今月から本格的にスタートする。このファンドはCRTの指針の理念を実現する上での一助となる。日本でもこうした社会貢献型ファンドが発売されはじめている。


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