経団連くりっぷ No.137 (2000年12月14日)

なびげーたー

WTOのルールづくりに積極的に参加しよう

国際経済本部長 久保田政一


WTOにおいてサービス自由化交渉が進展する中、経団連ではジュネーブにミッションを派遣し、各国の代表ならびにWTO事務局幹部と意見交換した。

シアトル閣僚会議の決裂以降、新ラウンドの立ち上げは未だに目途が立っていない。他方、サービスの自由化交渉については、WTO協定上本年中に交渉を開始することになっており、年内に各国提案が出され、来年3月の評価会合を経て、交渉の第二フェーズに進むこととなっている。

そのような中、貿易投資委員会では、昨年10月に「サービス貿易自由化協議会(JSN)」(議長:槙原副会長・貿易投資委員長)を設置し、日本政府ならびに欧米のサービス産業との意見交換に努めてきた。

さる11月23、24日には、團野JSN議長補佐(貿易投資委員会・総合政策部会長)を団長とするミッションをジュネーブに派遣し、日米欧およびアジア・ラテンアメリカの発展途上国等計11ヵ国の政府代表、WTOサービス貿易理事会議長、WTO事務局幹部と意見交換を行った。

私もミッションに参加したが、直前に送ったJSNのポジションペーパーに全員が目を通してくれており、懇談の冒頭から実質的な議論ができたことは驚きであった。ジュネーブから見れば、欧米の産業団体は頻繁にやってくるが日本の姿が全く見えないことから、日本は自由化に関心がないのかと思っていたようである。日本では、ルールは国や国際機関がつくるものであって、民間はそれに従うもの、これに対し欧米では、ルールは民間が政府を通じてつくるものという彼我の姿勢のギャップを改めて痛感した。

130ヵ国を超えるWTOでは、共通の利害を有する国々といかに連携を図り勢力を拡大するかが重要であり(実際「フレンズ」というグループがいくつもある)、日本は比較的立場の近い欧米との連携を強化するとともに、少しでも多くの発展途上国と手を組むことが必要である。

懇談では当方から、(1)サービス交渉を包括的な新ラウンドに統合することが必要不可欠である、(2)国内規制の透明性の向上が交渉の優先課題である、等を主張した。

これに対し、各国から出された意見としては、(1)サービス交渉を成功に導くには、発展途上国との対話を重ねることが重要である、(2)農業とサービスは車の両輪であり、二つの交渉は同時並行的に進めていく必要がある、等のコメントが寄せられた。

WTO事務局では豊富な知識と経験を有するプロフェッショナルを要職に配している。ハートリッジ・サービス貿易部長もその一人である。夕食の席で彼がもらした「WTO自体は本来弱い組織である。最近では、発展途上国、NGO、労働組合からの誤解や批判が高まっており、WTOは危機にさらされている。このような時こそ、日本をはじめとする産業界の強力なバックアップがなければ、自由貿易体制は維持できない」という言葉をかみしめながら帰国の途についた次第である。


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