第９回日本ブラジル経済合同委員会（団長 室伏 稔 日本ブラジル経済委員長）／11月６〜10日
11月７日、サンパウロにて、第９回日本ブラジル経済合同委員会が開催された。日本側から室伏団長をはじめとする約100名、ブラジル側からタピアス商工・開発大臣、モレイラ全国工業連盟（CNI）会長ら約160名が参加した。両国代表団は、10月下旬に経団連とCNIが公表した「21世紀に向けた日伯同盟」構築のための共同報告書に基づき、日伯間のビジネスの有望分野や課題について議論を深めた。
また、日本側代表団は翌８日、ブラジリアを訪れ、カルドーゾ大統領をはじめブラジル連邦政府要人と懇談した。さらに、ブラジル経済・産業の現状に対する理解を深めるべく、合同委員会の前後に各地の企業視察を実施した。
「21世紀に向けた日伯同盟」構築のための共同報告書は、近年のブラジル経済・産業の変化をとらえ、低迷の続く日伯経済関係の再活性化を図るべく、経団連とCNIが共同で協力拡大の可能性の高い分野と課題を洗い出し取りまとめたものである。
11月７日に開催された第９回日本ブラジル経済合同委員会では、同共同報告書に基づいて、より一層、議論が深められた。まず、日伯経済関係を強化するための戦略として、文化・制度の違いを超えた相互理解のための情報提供やセミナー開催の重要性、税制・労働法をはじめとするブラジル・コストの削減、公的資金による金融面からのバックアップの必要性など、双方から率直な指摘がなされた。日本とメルコスールとの自由貿易協定の中長期的な検討など、踏み込んだ意見も出された。
また、今後の関係強化の有望分野として、日本側が石油、電力などインフラ部門への投資に意欲を示す一方、ブラジル側は農産品、工業製品の対日輸出拡大に強い期待を表明した。
閉会式において、タピアス商工・開発大臣は、ブラジルが完全な民主主義下にあり、経済面でもインフレの抑制、通貨の安定に成功していること、過去10年間、経済の開放化・民営化を通じて工業部門の近代化、生産性向上に努めてきたことを強調した。そしてブラジルが日本にとって、流通基地として、また食料・エネルギー供給基地としての役割を果たし得る可能性、および排出権取引を絡めた森林保護に関する日伯の協力の可能性に期待すると述べた。
閉会に当たり、両国代表団は、ブラジル側が対日輸出拡大を目的としたワーキング・グループを設置することや、年１度の合同委員会の中間時点における、少人数の双方代表による運営委員会の開催を検討することなどを盛り込んだ共同コミュニケを採択した。
11月８日、カルドーゾ大統領は、ブラジリアの大統領官邸で日本側代表団の一人ひとりと握手する歓迎ぶりを示した。大統領は、かつてのナショナル・プロジェクトの時代とは異なり、今後の日伯経済関係の強化は、両国政府の支援の下、民間部門主導で図られるべきであることを強調した。
とりわけ、最近、ブラジルで法制化された「多年度投資計画」（アバンサ・ブラジル）に代表されるインフラ分野やIT分野などにおいて、日本からの投資および人材の受け入れを歓迎すると述べた。
前述の共同報告書を作成する過程で、日伯経済関係を再活性化するためには、まず、日本企業がブラジル産業の現状を正しく認識することが重要であるとの指摘がなされた。
そこで、合同委員会前日の６日、日本側代表団はサンパウロ郊外の航空機メーカー、エンブラエル社を訪問した。同社が民営化後わずか４年の間に、世界第４位の航空機輸出メーカーへと飛躍的な発展を遂げた事実と、それを可能にしたブラジルの技術水準の高さに、参加者は強い感銘を受けた。
さらに、９日、10日の両日、日本側代表団の一部がブラジル南部のパラナ州クリチバ市を訪れ、日本企業が初めてブラジルの携帯電話事業に進出したグローバル・テレコム（日商岩井、KDDI、モトローラ他が出資）や、古河電気工業、ルノーの工場を視察した。通信インフラの整備が急ピッチで進むなど、同州の活気に満ちた産業の現状を肌で感じることができた。
これらの企業に共通する点として、パラナ州への進出の理由に、アルゼンチン、パラグアイに近接した同州のメルコスールを視野に入れた地理的重要性を挙げており、実際、これらの国々への輸出の割合が高い。
また、パラナ州政府、クリチバ市要人との意見交換では、環境を重視した都市整備への取組みについて、示唆に富む説明をきいた。