経団連くりっぷ No.137 (2000年12月14日)

「IT時代における消費者対応と危機管理」セミナー/11月24日

IT時代の消費者対応のあり方と企業の危機管理体制の構築


日本経済が消費者主導型に転換する中で、インターネットを用いた消費者対応を含め、従来とは異なる消費者行動に対して、いかに適切な危機管理体制を構築するかが企業の重要課題となっている。そこで、経団連では、(社)消費者関連専門家会議(ACAP)(財)経済広報センターと共催で、標記セミナーを開催した。

  1. 田島義博 ACAP会長(学習院大学教授) 講演要旨
  2. 消費者不況といわれるが、消費者ニーズの研究が不十分と考える。その意味で、企業にとって、苦情を含めた消費者からの情報は、消費者との接点を増やし企業の成長のきっかけとなる重要性を持つ。ITの進展により企業への不満等のマイナス情報がたちどころに伝播する一方、この商品・サービスが良いという評判も即座に伝わる。こうした環境変化に企業の消費者対応の仕組み等を対応させなければならない。消費者対応部門と経営トップの距離を短くするなど、企業は、消費者対応を戦略的意思決定の中心に位置づけるべきである。

  3. 吉田良子 国民生活センター理事講演要旨
  4. 当センターに寄せられる消費者の苦情件数は年々増加し、現在は年間50万件以上である。最近は情報通信サービス・機器に関する苦情や企業の倒産がらみの相談が増えている。今後、情報通信関係、国際取引、規制緩和に伴う苦情が増えるとともに、高齢者からの苦情・相談の急増が深刻な問題となると予想される。企業は、企業の常識と消費者の常識との乖離をよく認識し、的確に対応してほしい。

  5. 企業の先進的取組みの事例
  6. P&Gファー・イースト・インク・楢村マネージャー、花王・中曽根消費者センター所長、サントリー・近藤東京お客様相談室長から各社の取組みの事例紹介があり、「日頃からクライシストレーニングを積んでおり、緊急時には担当者が直接トップに連絡できる体制をとっている(P&G)」「各事業部門の垣根を低くし、消費者対応部門に寄せられた情報を生産・開発・営業部門に反映させている(花王)」、「お客様相談室の使命は顧客維持であり社内のプロフィットセンターと位置付けている(サントリー)」等の指摘が行われた。

  7. 鍋嶋詢三 ACAP理事長講演要旨
  8. 最近の一連の企業不祥事により、消費者の企業不信が著しく高まっている。これは一過性の現象ではなく、消費者意識の変化と認識すべきである。今後企業は消費者へのアカウンタビリティをより一層高めていかねばならない。また、そのためにACAPでは、苦情対応マネジメントの指針を作成し、配布している。


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