経団連くりっぷ No.138 (2000年12月28日)

経団連第54回評議員会/12月13日
森内閣総理大臣

来賓挨拶

「日本新生」に向けた「実行と責任の内閣」

森 喜朗 内閣総理大臣

12月1日に臨時国会が閉会した。国民生活に直結する補正予算を始め、IT基本法など、限られた会期の中で、32本の法案の成立をみるなど、多くの成果をあげることができた。政府・連立与党三党の協力の成果であると考える。

12月5日の内閣改造は、来年1月6日に実施される中央省庁改革を見据え、21世紀に向けた万全のスタートができるよう、改革の趣旨を体現できる強力な体制を整備するものである。新内閣は、「日本新生」に向け、経済社会の構造改革に取り組む「実行と責任の内閣」でありたいと考えている。

内閣の当面の最重要課題は、景気を一日も早く本格的な回復軌道に乗せることである。わが国経済は、これまでの迅速かつ大胆な政策により、好調な企業収益を背景に企業部門を中心として緩やかな改善を続けている。このため、先般決定した「日本新生のための新発展政策」を着実に実行に移し、先の国会で成立した今年度の補正予算の迅速・的確な執行に全力を挙げていく。

また、平成13年度予算は、景気を自律的回復軌道に乗せるとの考えを継続して、同時に「日本新生特別枠」を活用し、私自身のリーダーシップによって、IT革命の推進、環境問題への対応、高齢化対応および都市基盤整備の四分野を中心に、わが国経済社会の新生に特に資する施策に特段の予算配分をしたい。財政の効率化と質的改善を図るため、公共事業の抜本的な見直しに取り組むなど、中央省庁改革を好機として、施策の大胆な見直しと効率化を進め、新世紀のスタートに相応しい予算となるよう全力をつくしたい。

日本経済には大きな潜在力があると考えている。不良債権問題など足下の困難な問題に敢然と立ち向かうとともに、自由闊達で創意工夫にあふれた経済活動を可能とするような環境を整備していかねばならない。そのために経済構造改革とIT革命の推進はわが国の未来への重要なキーワードであると考える。

経済構造改革については、さる12月1日に新たな行動計画を閣議決定した。この行動計画は、本年7月に設置した「産業新生会議」での産業界の皆様方との真剣な議論を通じて策定されたものであり、わが国の産業競争力を向上させるために不可欠な措置を盛り込み、新たな発展・成長のために取り組むべき課題を明らかにした。こうした施策を迅速かつ強力に推進することによって、力強い成長と活気にあふれる経済社会を現実のものとしていく。

また、IT革命は、わが国経済社会を大きく変革し飛躍させる力を秘めている。国民の全てがIT革命の恩恵を受け、これを新たな成長の契機としていくために、「日本型IT社会」を構築していくことが不可欠である。先般、IT戦略会議において、「IT基本戦略」をとりまとめていただくとともに、先の臨時国会における「IT基本法」の成立に加え、民間同士の書面の交付等を義務づけた法律を50本一括して改正したことは、大きな成果である。今後は、基本法に基づく「IT戦略本部」において、早急に「IT国家戦略」と「重点計画」を策定し、大胆な規制改革や新技術開発等に取り組んでいく。

また、国民1人ひとりが安心し、心豊かにゆとりある人生を過ごせるようにすることも大切である。その観点から極めて重要な課題である教育については、教育改革国民会議等の国民的議論を踏まえ幅広い改革を実行していく。私は、来年の通常国会を「教育改革国会」と位置づけ、直ちに取り組むべき課題について一連の教育改革関連法案を提出したいと考えている。

さらに、社会保障制度については、横断的・総合的な見直しが必要である。先般の有識者会議の報告を踏まえ、具体的な改革の進め方について早急に検討していく。

新たな中央省庁体制は、改革の本旨である「国民の立場に立った総合的・機動的な行政」を実現し、改革のメリットを国民にとって確かなものにしていくことが、新たな内閣が担う最も重要な課題の一つである。中央省庁再編は行政改革の第一歩であり、これが終着点ではない。先に決定した「行政改革大綱」においても、今後取り組むべき重大な課題が指摘されている。私は、こうした諸課題に思い切って取り組んでいくことが、国民から信頼される政府を構築するうえで何よりも重要であると考えている。

未だ途半ばにある規制制度改革についても、情報通信など更なる競争環境の整備を急ぐべき分野、医療福祉、雇用労働、教育といった社会的分野などの規制制度の見直しを重点的に進めていくことが必要である。このために、来年3月には新しい「規制改革推進3か年計画」を策定し、また、必要な組織体制の整備を進め、強力に規制制度改革に取り組んでいく。予算も総理大臣の責任で内閣府でとりまとめていきたい。新たに経済財政諮問会議を民間の方々にも加わっていただき設立するが、ぜひ、経団連からも積極的な意見をいただきたい。

外交分野では、米国新政権との新たな信頼関係の構築、ロシアとの平和条約交渉、日朝国交正常化交渉など多くの課題がある。大切なことは、わが国のあるべき姿、進むべき道についてしっかりとした展望を持って、一歩一歩前に進んでいくことである。

私は、「国民とともに歩み、国民から信頼される政府」を信条とし、初心に立ち返り、謙虚に国民の声に耳を傾けつつ、内外の重要課題にひたむきに取り組んでいく決意である。


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