経団連くりっぷ No.138 (2000年12月28日)

経団連第54回評議員会/12月13日
平沼通商産業大臣

来賓挨拶

産業界が活動しやすい環境をつくる

平沼赳夫 通商産業大臣

景気は緩やかな回復基調にある。産業界の努力により、設備投資も大変活発になり、企業収益も改善をみたが、中小企業に元気がない。さらに、GDPの6割を占める個人消費もまだ完全な回復をしていない。

官民が一体となって協力し、景気を持続的な安定軌道に乗せるのが21世紀のわが国にとって不可欠であり、そのために政府は産業新生会議で産業界の方々と一緒に努力してきた。

また、21世紀の経済の起爆剤といわれているITについては、IT戦略本部や民間の方々に加わっていただいたIT戦略会議で議論の末、基本計画がとりまとめられた。

先日閣議決定した「経済構造改革のための新たな行動計画」は3つの柱で構成されている。第1は企業の創造的な経済活動を促進するため大胆な法改正をしていくことである。例えば先の臨時国会でITに関する書面一括法という50本に及ぶ法改正を一括処理した。大胆な法改正、IT革命の推進、雇用システムの改革、といったことが基本である。

第2は、エネルギー、物流、情報通信、金融などの分野での高コスト構造の是正、第3は、マイナスに捉えられているわが国の高齢化の問題である。逆にこの高齢化というものをプラスに変えることもできると思う。これからの成長の新たなエンジンに高齢化を活用していこうという構造改革が必要である。

21世紀には環境制約も大きな問題だが、日本の潜在能力からいえばこの環境制約をプラスに、新たな成長のエンジンにできる。

私は経済構造改革の担当大臣として、これらの問題に取り組んでいく。しかし、そのためには大きな関門である膨大な不良債権の問題を解決しなければならず、これを抜きにして日本経済の再生はあり得ない。そのため、金融システムを含め大胆な挑戦をしていきたい。

わが国の中長期的な潜在成長力については、概ね2%程度といわれているが、日本の潜在能力からいえば、より高い成長、例えば3%以上の成長も可能であると考えている。そうすることによって640兆円といわれている不良債権の問題、国の借金の問題にも手がつけられる。私は、決して安易な楽観論を申し上げているのではなく、わが国経済の新たな発展・成長に向けて、官民が懸命の努力をしなければならない時期に来ているということを強調したいと考えて申しているのである。

来年1月6日から通商産業省は「経済産業省」に生まれ変わる。経済大国日本の一翼を担い、責任を果たさなければならない。

WTOの新ラウンドの早期立ち上げに向けて全力で取り組むことは、わが国の責務であり、WTO体制を補完する意味からも今、世界の趨勢は2国間の自由貿易協定が大きな流れになっている。今年の秋、シンガポールとの間で自由貿易協定の基本的な合意ができた。ゴーチョクトン首相と森総理との会談で、2001年中に自由貿易協定の交渉を終了することを約束した。韓国との間でも具体的な話が進んでおり、今後、メキシコ、チリとも締結していくことを考えていかなければならない。

経済産業省に生まれ変わる通商産業省としては、産業界が仕事をしやすいような環境整備に努めていきたい。


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