経団連くりっぷ No.138 (2000年12月28日)

第53回九州・山口経済懇談会/12月6日

経済新生に向けた構造改革と
九州・山口の発展につき九経連と懇談


「経済新生に向けた構造改革と九州・山口の発展を目指して」を基本テーマに、経団連と九州・山口経済連合会(九経連)共催の懇談会が熊本市にて開催された。経団連側より今井会長、辻・前田・片田・槙原・香西・上島の各副会長が出席し、210名の参加の下、活発な意見交換が行われた。また、今井会長らは懇談会に先立ち、九州日本電気株式会社を訪問し、最先端の半導体製造工場施設などを視察した。

  1. 九経連側発言要旨
    1. 開会挨拶
      〔長野 吉彰副会長/肥後銀行会長〕
    2. 現在の九州・山口地域は、IT関連を中心に鉱工業生産が増加傾向にあるものの、個人消費や失業率は依然として厳しく、景気回復を実感するには至っていない。
      今後のわが国経済復興の鍵を握るのは、政局の安定と規制緩和による競争原理を活かした民間企業活力の再構築であるが、当地域では域内総生産に占める公共投資の割合が全国平均より高く、公共事業による景気浮揚が重要である。具体的には、未だに遅れている交通インフラなど社会基盤、新農政の視点に立った農山村生活基盤整備、中小・ベンチャー企業の育成、失業者対策等についての配慮が必要である。
      また、環境産業の育成、特色ある観光戦略の構築、アジア諸国等との国際交流の推進等についても鋭意努力している。
      ITは21世紀の日本再生を握る鍵である。九経連としても最優先で取組むべきであると考えている。

    3. 九州・山口地域の景気の現状
      〔佃 亮二副会長/福岡銀行会長〕
    4. 九州・山口地域の景気は、緩やかな回復基調にあるものの、依然として厳しい。九経連のアンケートによると、業況が悪いと回答する企業が半数近くある。
      九州の景気を回復軌道に乗せるため、来年度政府予算については、景気回復に配慮した編成をするとともに当地域への重点配分を期待する。特に、整備新幹線、関門海峡道路など、九州の基幹プロジェクトに対する重点的な予算措置が望まれる。

    5. 九州農林業と環境問題
      〔長野 吉彰副会長/肥後銀行会長〕
    6. 農業ビッグバンの大競争時代にあって、生鮮食料供給基地である九州農業も新たな対応を迫られている。頭脳的経営により高収益を実現する農業法人やベンチャー的農家が各地で育ちつつある一方、九州の農業生産基盤や生活環境基盤は依然として遅れている。国家的観点から当地域への政府予算の重点配分が必要である。
      九州の山村地域でも、林業後継者の減少に加え、木材価格が長期にわたり極端に低迷しており、大変厳しい状況に直面している。山村地域が本来担っている国土保全や水質源涵養などの公益的機能の維持は、21世紀の極めて重要な課題であり、新たな森林基本法を早期に制定することが重要である。
      産業廃棄物の不法投棄については、自治体、住民などが連携して摘発に取組んでいるが、投棄の多くが中山間地域等で行われ、地下水や景観に深刻な影響を及ぼしている。また、年間2,000万トン(全国)もの食品廃棄物のうち再利用は9%に過ぎず、多くが焼却、埋立て、海洋投棄されているが、ロンドン条約等に伴い、今後、陸上処理とリサイクルが不可欠である。

    7. 環黄海経済圏の形成に向けて
      〔野崎 元治副会長/十八銀行会長〕
    8. 九州・山口は「アジアと一体化して発展する地域」を目指している。現在の2国間定期協議の場である「九州・中国産業技術協議会」、「九州・韓国経済交流会議」を拡大した、3国間の「環黄海経済・技術交流会議」を今年度中に発足させ、域内の連携を強化したい。
      国際化に対応するうえからは、九州が一丸となった体制づくりが必要である。10月には九州の国際化推進に取組む関係各機関が一堂に会する「九州国際化推進懇談会」を開催し、国際交流事業の情報交換等につき提案を行い、各機関の連携強化に向け始動した。
      アジア諸国との交流拡大のためには、空港、港湾、新幹線、高速道路など九州の骨格を形成する基礎的社会資本の整備が不可欠である。

    9. 九州・山口における情報通信インフラ整備に向けて
      〔石井 幸孝副会長/九州旅客鉄道会長〕
    10. 九州では、福岡県主要都市を光ファイバー網で結ぶ「ギガビットハイウェイ構想」をはじめ、高速大容量の通信インフラ整備を促進しており、今後、韓国等アジア諸国との高速大容量通信ネットワークの形成を目指したい。
      しかし、九経連のアンケートによれば、九州の地場企業における情報化は、全国に比べて立ち遅れている。情報化推進に当たっての課題は、通信回線料金の低廉化、情報通信インフラの整備、および人材育成である。九経連では、これらの課題について、十分検討を行い、対処していくこととしている。
      ITS(高度道路交通システム)関連は、2015年に60兆円の市場が見込まれる成長産業の一つである。九経連では、本年9月に産官学連携のもと「九州・山口ITS研究会」を発足させ、今後、ITSモデル地区実験誘致等を目指し、積極的な活動を展開する予定である。

  2. 経団連会長・副会長発言
  3. 前田副会長より産業新生会議と税制改正の推進、片田副会長より今後の会社法制の課題、辻副会長より最近の環境問題について発言があった。また、槙原副会長より貿易・投資をめぐる課題、上島副会長よりアジア諸国との経済交流について説明した後、香西副会長が広域連携を通じた魅力ある九州の創造につき発言した。
    最後に今井会長より、九州におけるさまざまな取組みを踏まえつつ、経団連として経済新生に向け積極的に取り組んでいくとの総括があった。


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