経団連くりっぷ No.139 (2001年1月11日)

社会貢献担当者懇談会(変化する企業と社会貢献)(座長 島田京子氏)/12月15日

戦略的かつ効果的な社会貢献活動

−ルーセント・テクノロジー社の事例


世界最大手の通信機器メーカーであるルーセント・テクノロジー社より、グローバル企業における社会貢献活動の役割と推進方策ということで、ルーセント・テクノロジー財団のデビッド・S・フォード理事長より説明をきいた。

○ フォード理事長説明要旨

  1. ルーセントの社会貢献活動
    ルーセント・テクノロジー社は、地域社会の質を高め奉仕するという責任感とともに行動する企業という企業使命に基づき、税引き前利益の1.2%を社会貢献活動の資金としている。また、その実行の中枢としてルーセント・テクノロジー財団を設立し、上記資金の50%が充当され、今年度の財団予算は約5,000万ドルであった。

  2. 財団の戦略的な社会貢献活動
    当財団は主に、申請された提案の中から選ばれたプログラムに対し、パートナーとして助成活動を行っているが、活動の効果を上げ、費用対効果を測るため、分野を青少年教育に絞っている。そして、初・中等教育の改革、理工系分野におけるマイノリティの教育機会の創出、コミュニティと青少年に対する支援に注力している。具体的には、世界各国の科学博物館等との連携による実験等を通しての子どもの理科と数学への興味や情熱を育むサイエンス・ミュージアム教育プログラム、数学と科学分野における世界の優秀な大学生に奨学金とベル研究所本部でのインターンシップの機会を提供するグローバル・サイエンス・スカラーズ・プログラム、教員に教授法研修や理科実験用器材の定期的な配布を行う教育改善プログラム、文化・所得・人種等異なる背景を持つ若者が共同作業を通してリーダーシップと相互理解・相互学習をするルーセント・リンクス・プログラム等がある。
    また、米国以外の同社の事業展開地域においても活動を行うべきと考え、前述の活動の一部を米国外でも行うと同時に、国際青少年育成財団(IYF)への基金拠出を通し、日本を含め世界16カ国で教育改善プログラムを実施している。

  3. 各国支店と社員の社会貢献活動
    同社の社会貢献活動は当財団による世界的規模の活動が中心であるが、同社の各国活動拠点においても、地元コミュニティが必要とする支援を、草の根的に独自に行っている。このローカルでの活動と財団のグローバルな活動は連携して進めている。
    また、社員の思いやりの気持ちを尊重し、社員の寄付金に上乗せするマッチング・ギフト制度やある一日に全世界の社員が地域の社会活動に参加するグローバル・デイ・オブ・ケアリング等を行っている。

  4. 企業にとってのメリット
    社会貢献活動により社会からインテリジェントな印象を持たれることは、直接・短期のビジネス上のメリットに結びつかなくても、企業のブランドイメージを高め長期的な利益につながる。


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