中央省庁等改革に関するセミナー/12月18日
2001年1月6日から、中央省庁の再編、内閣機能の強化等を内容とする中央省庁等改革がスタートする。そこで、標記セミナーを開催し、橋本龍太郎行政改革担当大臣からご挨拶を賜るとともに、河野昭中央省庁等改革推進本部事務局長より改革の全体像の説明をきいた。
中央省庁は明年1月6日を期して、1府12省庁の体制が始まる。せめて国の規模を半分にしたいと考えたのが随分昔の気がするが、ようやくここまで来た。その間に世の中は動き、今では、この分類の仕方に多少工夫を要するところも出てきたのではないかとも思われる。
私が中央省庁改革の中で一番力を入れてきたのは、内閣総理大臣の権能をできるだけ強化することである。そこで、内閣府を新設し、経済財政諮問会議、総合科学技術会議を置いた。経済財政諮問会議には、短期の経済見通し、経済対策、予算編成の基本方針を審議するだけでなく、中長期の計画や構造問題についても議論して、経済構造、長期の経済見通し、中期の財政見通し等もつくってもらう大事な役割がある。それだけに、国民に対する説明責任も重要になる。だから、その役割を担うのに相応しい事務局が必要で、企画・立案の能力に優れた各省庁の人材だけでなく、任期付任用制度をフルに生かして、公募によって、民間からも腕を奮いたい人々が積極的に加わってもらいたい。
規制改革に関して、それがいかに大事であるか嫌というほど痛感したのは、日米の特許公報を利用した技術比較について説明を受けた時だった。その中で金融技術に関して、日本では昨年6月時点でデリバティブ、セキュリタイゼーションの特許申請がゼロだったのに対して、米国では既に複数の特許が考案されて実用化され、それらを駆使した金融機関の大きな収益源となっていた。これは、日本の縦割り行政が銀行、証券、保険といった業態ごとに保護し、新たな境界領域に立脚する考案を必要としない状態が続いたからだ。それが今日、日本にダメージ、影響をもたらしている。だから、規制改革はいくらいっても足りることはない。できるだけ白地を増やすことが新事業の輩出を生み出す土台になる。それだけに、現在の規制改革委員会が来年3月31日にその役割を終えられた後、その後継の検討機関はいわゆる8条機関として組織し、強い権能を発揮できるものにしたいと考えている。
今回、行政改革担当大臣として入閣し、自分が直接担当することになったのは、特殊法人等の改革、行政委託型の公益法人の見直し、公務員制度の改革の3つである。これらは今後5年間という歳月を与えられているが、その作業に連綿と時間をかけることはできず、最初の1年間で終える決心で臨まなければならない。特殊法人等に関しては、非公務員型の独立行政法人への移行、完全に民営化、廃止、場合によっては国に積極的に残すという判断をできるだけ早く決めないといけない。
今回の改革では、従来の行革の議論に見られた官と民、中央と地方の役割分担だけでなく、政と官の役割についても本格的に議論されたことが特徴的である。例えば、各省庁における大臣の政治的リーダーシップを補佐するため、副大臣、政務官が新設されたが、副大臣は従来の政務次官と異なって直接ラインに入り、責任を持つことになる。また、官の体質を改善するという意味では、行政の透明性向上と説明責任を徹底するため、情報公開法の施行、政策評価の実施、公会計の見直し等を進めている。
縦割り行政の排除については、ソフト、ハードの両面で取り組んでいる。ハード面として、重要政策の企画立案・総合調整を行う内閣府を設置し、各府省は目的別に大くくりに再編した。これは、従来、総理府の外局として設置された横割の庁の、調整機能が機能していないという批判に答えるためである。一方、ソフト面として、省庁間の政策調整システムをルール化した。これまで各省庁間に縄張り意識が働いて、政策調整に時間がかかる場合によっては換骨奪胎されているという批判もあった。そこで、内閣官房や内閣府が各省庁に対して調整を指示したり、自ら調整を行えるルールを閣議決定した。これが機能すれば、縄張り争いが解消され、迅速かつ的確な政策展開ができると思う。
独立行政法人に関しては、特殊法人に対するさまざまな批判を解消するため創設されたものである。具体的には、特殊法人では曖昧だった監督官庁との間の責任分担の関係を通則法で明確にしたり、特殊法人にはない外部監査も導入したり、その前提として企業会計に則った会計基準を定めた。現在、特殊法人に関して、独立行政法人への移行という話も出ているが、独立行政法人が特殊法人に対する批判を修正するために制度設計したことによるのではないかと思われる。
省庁改革がどのくらい進んだのかとよく聞かれるが、私は「富士山も貸切バスで5合目までは皆で行けるのと同じように、今は5合目である」と答えている。これから、今回の改革に魂が入るためには、総理がリーダーシップを発揮するための仕掛けをどうご活用いただけるかと、公務員一人ひとりが意識改革をどう進めるかが重要である。