経団連くりっぷ No.140 (2001年1月25日)

統計制度委員会(委員長 井口武雄氏)/12月19日

わが国経済統計の問題点と解決の方向性

−日本銀行 村山調査統計局長にきく


統計制度委員会では、経済運営や企業の事業展開に役立つものにする観点から、統計の改善策につき提言してきているが、総務庁・統計審議会の検討状況ははかばかしくない。そこで、統計審議会委員(当時)でもある日本銀行の村山昇作調査統計局長から、わが国経済統計の抱える問題点やその解決の方向性に関する説明をきくとともに懇談した。

  1. 村山局長説明要旨
    1. 統計審議会の問題点
    2. 統計審議会は構成メンバーが統計学者に偏っており、統計の利用者や報告者の立場に配慮した審議が行われにくい。また、消費者物価指数など二次統計が審議の対象とならないという問題がある。さらに、個別統計の技術的な議論に陥りがちであり、わが国統計全体のあり方といった大きなテーマを議論する機会を見出すことがなかなか難しい。

    3. 景気予測関係調査間の重複
    4. 統計審議会の調査結果では、多くの大企業が類似の景気予測関係調査の対象となっていること、また各々の調査に類似の調査項目があることが判明した。こうしたことは、国民負担の観点からみて問題があり、何らかの方法で重複を解消する必要がある。

    5. わが国経済統計のあるべき方向性
      1. 統計の「憲法」策定・遵守を
        改革の一つの方向としては、統計の企画立案・実施の一元化がある。ただし、現在の制度の下では統計の一元化には疑問が多い。
        その前に、統計についての考え方を確立する必要がある。例えば、「統計は社会の公共財である」との大前提の下に、「ユーザーの利便性向上」「機密管理の徹底」「透明性の向上」「中立的な統計公表姿勢」といった統計の「憲法」を策定し、関係者がこれを遵守することにしてはどうか。

      2. 「格付」による市場原理の導入を
        一つのアイデアとしては、民間の側で、統計に関する客観的な評価基準(必要性、報告者負担等)を作り、これに沿って各統計を「格付」することも考えられる。こうした方法で、望ましい統計の出現、不用な統計の淘汰が進んでいくことが期待される。

  2. 懇談要旨
  3. 懇談では、経団連側出席者から「統計審議会のあり方を議論すべきではないか」「総務庁は統計の総合調整機能を果たせていないのではないか」「家計調査を抜本的に改革すべきではないか」「消費者物価指数が実感と乖離しているのではないか」「IT時代に即した統計の取り方を検討すべきではないか」といった意見が出された。


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